研究課題
基盤研究(A)
本研究では、Bare板とナノ多孔質層板における正味の投入電力量を測定した。その結果、Bare板に比べてナノ多孔質層板は、板の材質によらず20〜30%の通過熱量の増加(伝熱促進)を定量的に確認した。流動条件を一定としてナノ多孔質層板の厚さを5倍程度変化させた結果、通過熱量は厚さと無関係に同一であった。この事実から、熱抵抗がナノ多孔質層〜流体領域にあることが明白となった。しかし、ナノ多孔質層(30%程度の空隙率)の厚さは100ミクロン程度で熱抵抗層として無視でき、熱対流の観点からもこの厚さは流体力学的には滑面と言えるので、ナノ多孔質層による流れの攪乱による伝熱促進は考えられない。一方、SEM観察でナノ多孔質層は多く粒子から構成されており、熱的には断熱層と判断でき、また金属基板との接合層(酸化膜:断熱層)が最小5〜10nm以上の帯状の領域として観察でき、両者が十分に接合されていると判断できる。以上の結果、高温壁面からの熱量の正味の引き出しがBare板にくらべナノ多孔質層板では約20〜30%上昇することが明らかとなったが、この原因は、熱流がナノ多孔質層壁と金属基板との問に形成されたエッチング層(薄い断熱層)のさらに極薄い(5~10nm)箇所から集中的にナノ多孔質層へ流入し(熱流束が増加)、断熱材であるナノ多孔質層内の水を急速に加熱するため、多量の水を含有するナノ多孔質層は一種の高温流体壁を形成し、いわゆる熱抵抗が減少したと考えられる。この高温流体壁から如何に熱エネルギーが流体本体へ輸送されるかについては、未だ不明であるが、実験で観察されたナノ・ミクロ多孔質層壁近傍の流体温度がごく低周期で変動している実験結果の分析を進め、マイクロPIVなどの方法によって、ナノ多孔質層壁ごく近傍の流体運動の直接観察が重要であると考えている。
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