研究課題
基盤研究(A)
交流損失低減と安定性確保を両立させた電流分布制御型の金属系先進超伝導導体の性能を実証し、交流損失の発生を抑制しつつコイル内の熱流特性を高度に制御することにより、信頼性及び経済性に優れた伝導冷却型金属系超伝導パルスコイルを開発することを目的としている。低コストかつ高信頼性の金属系低温超伝導導体を用い、冷却構造材料として有機高分子繊維強化複合材の新材料(ダイニーマ)を用いることにより、交流損失の低減と冷却構造の最適化を図り、パルス運転が可能な伝導冷却型超伝導コイルを開発する。伝導冷却型コイルは、冷凍機による直接冷却により、液体ヘリウムや液体窒素などの寒冷を取り扱う煩わしさと危険性を除去し、操作性や安全性の観点から従来は適用が困難であった様々な分野への超伝導コイルの応用を広げるものである。使い易く高効率な伝導冷却型金属系超伝導パルスコイルの応用範囲は非常に広く、工場等の電力系統を安定化する瞬停・瞬低対策用SMESへの応用、磁場を利用した半導体製造などの製造装置への応用、医療用MRIやタンパク質の立体構造同定や癌治療など様々な用途に使用可能な超伝導サイクロトロン等の応用、磁気浮上列車や物流搬送システム等への応用など、様々な分野への適用が可能となる。その応用の一例として、瞬時停電(瞬停)及び瞬時電圧低下(瞬低)時の電力を補償する瞬停対策SMESへの適用を想定し、実際のパルス動作条件下での伝導冷却型超伝導パルスコイルの特性を実験的に評価すると共に、その有効性を実証している。平成16年度は開発目標である1MJ級コイルの製作に先立ち、100kJ級プロトタイプコイルを開発し冷却・励磁試験を行った。瞬低SMES用パルスコイルに必要な1秒放電に余裕をもって対応できることを示すと共に、連続パルス運転も可能であることを確認し、伝導冷却型低温超伝導パルスコイルの優れた熱特性を実証することに成功した。