研究課題
基盤研究(A)
本研究では、低コストかつ高信頼性の金属系低温超伝導導体を用い、冷却構造材料として有機高分子繊維強化複合材の新材料を用いることにより、交流損失の低減と冷却構造の最適化を図り、パルス運転が可能な伝導冷却型超伝導コイルを開発した。伝導冷却型コイルは、冷凍機による直接冷却により、液体ヘリウムや液体窒素などの寒冷を取り扱う煩わしさと危険性を除去し、操作性や安全性の観点から従来は適用が困難であった様々な分野への超伝導コイルの応用を広げるものである。使い易く高効率な伝導冷却型金属系超伝導パルスコイルの応用範囲は非常に広く、様々な分野への適用が可能となる。本研究では、その応用の一例として、瞬時停電(瞬停)及び瞬時電圧低下(瞬低)時の電力を補償する瞬停対策SMESへの適用を想定し、実際のパルス動作条件下での伝導冷却型超伝導パルスコイルの特性を実験的に評価すると共に、その有効性を実証した。研究の最初に短尺導体試験結果及びダミーコイルによる熱特性測定結果に基づき、コイル内での交流損失及びそれによる温度上昇の正確な定量的評価とそれに基づくコイル設計が可能であることをシミュレーションにより示した。更に、その結果を反映した伝導冷却型超伝導パルスコイルの詳細設計を行い、100kJ級伝導冷却型低温超伝導パルスコイルを試作した。巻線には導体に捻りを加えながらコンピュータ制御により自動巻線が可能な巻線機を開発し、交流損失の低減と高い安定性を両立した巻線構造を実現した。100kJ級コイルと変換器を組み合わせたエネルギー取り出し実証試験を行い、コイル内の優れた排熱特性により、定格の3倍のエネルギー取り出しを行ってもコイルにクエンチが発生せず、本方式による伝導冷却型超伝導パルスコイルが高い安定性を有することを実証した。また、有限要素法を用いたコイル内の熱伝導解析を行い、本設計に基づく伝導冷却パルスコイルの安定性尤度及び性能限界を見極めると共に、より経済性を高めた最適設計の手法を確立した。次に、100KJコイルの成功を受けて1MJ級コイルの試作及び冷却励磁試験を実施した。励磁実験では定格電流lkAの通電から時定数4秒で電源を遮断した際のコイルの温度上昇を測定した。遮断時に発生する交流損失447Jにより、コイル内の温度は最大3.9Kから4.4Kまで0.5K上昇するが、コイルは安定であり、IMW、1秒間の瞬低SMES用として必要な1秒間にコイル蓄積エネルギーの半分を放出する運転モードに余裕を持って対応できることを実証した。
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