研究課題/領域番号 |
16206032
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
船木 和夫 九州大学, 超伝導システム科学研究センター, 教授 (60091352)
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研究分担者 |
岩熊 成卓 九州大学, システム情報科学研究院, 助教授 (30176531)
木須 隆暢 九州大学, システム情報科学研究院, 助教授 (00221911)
柁川 一弘 九州大学, 超伝導システム科学研究センター, 助教授 (10294894)
熊倉 浩明 物質・材料研究機構, 超伝導材料研究センター, 酸化物線材グループ長 (90354307)
三戸 利行 核融合科学研究所, 大型ヘリカル部, 教授 (10166069)
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キーワード | MgB_2 / in situ法 / パウダー・イン・チューブ法 / ex-situ法 / 臨界電流密度 / 交流損失 / 熱的安定性 / 常伝導部伝播 |
研究概要 |
1)これまでの実績に基づき、MgH_2とBの粉末を用いるin situ法において、SiC添加や芳香族炭化水素添加による臨界電流特性の向上について系統的に検討した。その結果、双方ともに、添加により大きな臨界電流特性の向上が期待できることがわかった出発原料としてMgB_2化合物粉末を使用するex situ法については、in situ法テープから取り出したMgB_2コアを用いることにより、これまでのex situテープよりもはるかに高いJ_c特性が得られることを広範囲に検討した。MgB_2粉末の製造法を工夫することでin situ法を上回るJ_cが得られることを示唆している点で重要である。 長尺化に際しては、従来金属系線材で使用されてきたガンドリル法を適用し、多芯組込みを行った。使用した粉末は、上述の手法を適用したin situ法で作製された高純度・高仕様のMg+B粉末である。組込み材同士のギャップが均等になり、組込み材の動きが抑制され、断面均質性が向上した。これにより、長尺加工性が良好になった。これまでの線材製作・特性評価の結果に基づき次年度の長尺線製作のための線材設計、及び数テスラ以上の高磁界を発生させるためのコイル設計を行った。 2)交流電磁環境下で使用するMgB_2線材を開発するために、設計・製作した2種類のMgB_2多芯線について、液体ヘリウム中での横磁界損失を評価した。Cuシース、Nbバリア多芯線については、中空円筒導体モデルによる解析結果より損失特性が定量的に説明できることから、フィラメント同士がNbバリアを介して超伝導的に結合している結果が得られていることが判明した。フィラメントを細心化して低損失化を図る上では、バリア材料の選択に注意が必要であることを示している。CuNiシース、Taバリア多芯線の交流損失特性は従来から用いられている多芯線構造モデルによりほぼ定量的に説明することが可能であった。Taバリアの場合、フィラメント同士の超伝導的結合が抑制できることがわかり、フィラメントの細心化やツイストピッチの短縮によりさらなる低損失化が期待できることを示した。 CuNiシースMgB_2単心線について、液体ヘリウム中、および、伝導冷却を模擬する熱的環境下(真空グリースで線材表面を被覆し、液体ヘリウムによる直接冷却を抑えた)において、常伝導部の伝播現象を観測し、鉄シース線の場合と同様に数値計算により定量的な解析を行った。その結果、液体ヘリウム浸漬冷却下では液体ヘリウムの過渡的冷却効果により、真空グリース被覆下では被覆材(熱伝導材)内での熱拡散による冷却効果を考慮することにより、実験結果を定量的に説明できることを示した。 3)1項のコイル設計に基づいて製作したMgB_2コイルを本補助金により調達した温度可変装置に装着し、15Kから30Kまでの温度範囲で、直流通電試験、過負荷試験、交流通電試験を行った。その結果、材料の高い臨界温度特性を反映して臨界電流を超える通電に対しても安定な動作が可能であることを実証した。また、交流通電時においても、コイルの両端部、中央最内層部に設置した温度センサによる温度分布の観測結果から、高熱伝導絶縁体であるAlN製コイル巻枠により良好な伝導冷却効果が期待できることを示した。
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