研究概要 |
本年度の研究では次の研究を実施し成果を報告した.1)乱流により輸送される熱量の計測の精度検証のため,本研究で購入したシンチロメーターと既存の超音波風速計を用いて測定し基礎的検討を行った.精度は両方法とも5%程度であることが確認できた.2)緑化された地盤面への散水の違いによる熱流比較を行うため,人工的な水分供給が十分な草地と不十分な草地において潜熱・顕熱流を測定しそれらの特性を比較検討した.3)地上45mの地点で測定した熱流に関して,モーニンオブコフの相似則が成立するかどうかの検討をした.その結果,熱流は普遍関数として整理でき相似則は成り立つが,そのモデルの形は過去に草原を基に作成された式とは異なる乱流統計量もいくつか見られることが確認された.4)炭酸同化作用と密接に関連した緑自身の蒸散メカニズムをモデル化するため,数種類の樹木を用いて蒸散量を測定し,それを用いてパラメータ同定を行い,過去に提案されているモデルと比較検討した.5)天空放射輝度分布のモデルを集約して簡易化する研究を実施し,一様天空とした場合と分布がある場合とで,どの程度の差が熱環境のシミュレーション結果に現れるかを検証した.6)採光利用の観点から,天空の輝度分布を基にして,室内の照度を予測するアルゴリズムを構築した.7)雲の位置・量を,カメラ画像を用いて自動的に見いだす方法を開発するため基礎的な検討を行った.8)市街地では,道路,路地,建物周辺,庭などでそれぞれに異なる環境が形成される.この空間の体感評価を,申告調査と気温,湿度を始めとする物理的温熱環境要素の測定結果を基にして行い街区の熱環境評価を行った.
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