研究課題/領域番号 |
16206063
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
田村 剛三郎 京都大学, 工学研究科, 教授 (30155262)
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研究分担者 |
松田 和博 京都大学, 工学研究科, 助手 (50362447)
乾 雅祝 広島大学, 総合科学部, 助教授 (40213136)
星野 公三 広島大学, 総合科学部, 教授 (30134951)
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キーワード | 超臨界金属流体 / 放射光 / X線非弾性散乱 / アルカリ金属 / 金属-非金属転移 / ダイナミクス / 高温高圧 / モリブデンセル |
研究概要 |
X線非弾性散乱実験には、高温の流体ルビジウムと反応せずかつX線を透過し得る試料容器をいかに作るかが鍵となる。実験には10KeV程度の単色X線を用いているため特に後者が問題になる。昨年度は、試料容器の窓材としてルビジウムと反応しない単結晶モリブデンを用い、これを10ミクロンという極限まで薄くして実験を行ったところ、高温でピンホールが空くという問題が生じた。そこで本年度は、X線吸収のより少ないバナジウムを採用した。高温のルビジウムと反応しないことを確認した上で、40ミクロンのバナジウム窓材を電子ビーム溶接によりモリブデン本体と接合し、試料容器を完成させた。これを用いることにより、流体ルビジウムについて1673K、200barまでの高温高圧下でX線非弾性散乱実験に初めて成功した。 散乱ベクトルQの小さい領域(Q=1.85,3.19,4.53nm^<-1>)で求めた動的構造因子を減衰調和振動子モデルを用いて解析し、分散関係を得ることができた。分散曲線の低Q領域での傾きから求めた音速は、広い温度と圧力領域にわたり、超音波測定による音速に比べて常に大きくなることが分かった。すなわち、1〜2nmの波長嶺域での音速は、長波長極限での音速より常に大きい。さらに、密度の低下に伴って音速は両者ともに直線的にかつ同じ傾きで減少するが、密度が1.1gcm^<-3>以下になると、超音波測定による音速の減少の仕方が急に大きくなり、このため、この密度を境に両者の音速の差が拡大することが分かった。(以上、平成18年3月日本物理学会で発表) これまで我々が行ってきたX線回折およびX線小角散乱測定によると、1.1gcm^<-3>という密度は、体積膨張に伴って平均イオン間距離が増大するにもかかわらず、実測のイオン間距離は却って短縮するという異常な振る舞いが起こる密度に対応する。また、弱い密度ゆらぎが発生する密度でもある。さらに興味深いことに、1.1gcm^<-3>という密度は、ちょうど、ルビジウム中の電子ガスが低密度化による不安定性(負の圧縮率、負の誘電定数の発生)を起す密度に一致している。静的・動的構造における特徴的振る舞いは、低密度電子ガス系の不安定性によって引き起されたものである可能性が強い。
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