研究課題/領域番号 |
16206063
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研究種目 |
基盤研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
研究分野 |
金属物性
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
田村 剛三郎 京都大学, 工学研究科, 教授 (30155262)
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研究分担者 |
松田 和博 京都大学, 工学研究科, 助手 (50362447)
乾 雅祝 広島大学, 総合科学研究科, 助教授 (40213136)
星野 公三 広島大学, 総合科学研究科, 教授 (30134951)
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研究期間 (年度) |
2004 – 2006
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キーワード | 超臨界金属流体 / 放射光 / X線非弾性散乱 / アルカリ金属 / 電子ガス / 負の誘電率 / 高温超電導 / ダイナミクス |
研究概要 |
低密度電子ガスが負の誘電率をもつという理論予測は、ウィグナー以来発展してきた多体電子論の大きな成果のひとつである。しかし、その実在性については長く疑問視されてきた。我々は、高温高圧技術を用いて流体ルビジウムを膨張させ、電子ガスの密度を大きく減少させることに成功した。この手法とSPring-8の放射光を組み合わせることにより、負の誘電率をもつ電子ガスが実在するか否かについての検証実験を行った。電子系の挙動はイオン系の静的・動的構造に鋭敏に反映されるので、体積を膨張させながらX線回折、X線小角散乱、X線非弾性散乱測定を行い、ルビジウムイオンの挙動を詳しく調べた。その結果、体積膨張に伴って平均としての原子間距離は拡がっているにも関わらず、ある密度以下になると、実測の原子間距離が逆に短くなるという異常な振る舞いがX線回折測定から明らかになった。興味深いことに、原子間距離の短縮が始まる密度は、電子ガスの誘電率が負になると予測される密度に一致することが明らかになった。このことは、電子ガスの誘電率が負に変わったためにイオン間に引力が作用し始めたことを示している。また、X線小角散乱測定により、この密度領域において密度のゆらぎが発生することを確認した。さらに、X線非弾性散乱測定により動的構造因子を得、これを解析することにより分散関係を得た。低散乱ベクトル領域の分散関係から見積もった音速と断熱音速とを比較したところ、電子系が不安定性を起す密度領域で差が生じ始め、動的音速が断熱音速より大きくなった。これらの結果は、電子系の不安定性に起因して流体ルビジウム中に不均質構造が出現し、その中にナノスケールの硬い部分が存在することを示す。本研究は、イオンの挙動を通して、負の誘電率をもつ低密度電子ガスが実在することを初めて捉えたものである。負の誘電率は、新たな高温超電導機構を考える上で重要な意味を持つ。
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