研究課題/領域番号 |
16206075
|
研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
松尾 伸也 大阪大学, 大学院工学研究科, 教授 (90029299)
|
研究分担者 |
小俣 孝久 大阪大学, 大学院工学研究所, 助教授 (80267640)
上田 正人 大阪大学, 大学院工学研究科, 助手 (40362660)
|
キーワード | 光電極 / 色素増感太陽電池 / チタネート / 酸化チタン / 電荷分離 |
研究概要 |
半導体を用いた光電極による水の分解・水素ガス製造の原理を実用化レベルの技術にまで引き上げるには、エネルギーバンドの曲がりを半導体接合により制御し、光応答域での量子効率を向上させることが重要である。本研究では、ドナーをドープしたSr(Ti_<1-x>Nb_x)O_<3+δ>とTiO_2膜のヘテロ接合を有する光電極を作製し、電荷分離に及ぼすヘテロ接合の影響を調べた。先ず、(1)Ti-Nb合金板をH_2O_2+HNO_3水溶液で処理して、表面にアモルファス状のアナターゼTiO_2膜を形成した。次にSrOH水溶液中での水熱処理、あるいはSrNO_3との反応によりSr(Ti_<1-x>Nb_x)O_<3+δ>膜とし、その上にゾルゲル法によりTiO_2膜を塗布した。Xeランプ照射による光電流はTiO_2膜単独の場合の半分であり、作製したSr(Ti_<1-x>Nb_x)O_<3+δ>膜の高抵抗が問題であった。そこで、(2)良伝導を示す市販の黒色Sr(Ti_<0.98>Nb_<0.02>)O_<3+δ>単結晶板を用い、表面にゾルゲル法によりアナターゼTiO_2膜を塗布してヘテロ接合を作製し、その性能をF-ドープSn膜付きガラス板上に作成したアナターゼTiO_2単独膜と比較した。光電流はアナターゼTiO_2単独膜の2倍流れ、エネルギーバンド曲がりの有効性を実証することができた。更には量子効率の光波長依存性はTiO_2単独膜とは400nm付近で明瞭に異なりSr(Ti_<0.98>Nb_<0.02>)O_<3+δ>によるフィルター効果が観測された。接合界面のエネルギースパイクが原因と推察され、この現象はTiO_2膜の伝導帯内における電子のエネルギーロスが少ないことを示唆している。さらに、ヘテロ接合にすることにより0.2V近くも大きな開回路電圧が観測された。この現象を利用すると、光電極に加えて高出力の色素増感太陽電池が作製できることを実験的により実証した。
|