研究概要 |
まず,二核タングステンペルオキソ錯体K2[{W(=O)(O_2)_2(H_2O)}_2(μ-O)]・2H_2O(W2)の固体触媒への展開について検討した.本研究ではジヒドロイミダゾリウムカチオン部位を有するイオン性液体で表面修飾したSiO_2を新規に調製し,W2触媒の固定化を行った.この固定化触媒を用いて各種オレフィン類を基質として反応を行うと反応は高選択的に進行し,アリル酸化生成物や生成したエポキシドの逐次的加水分解によるグリコールなどはほとんど生成しなかった.本反応系では,内部オレフィンに対して特に高活性を示した.cis-およびtrans-オレフィンは,二重結合周りの立体を保持したまま立体特異的に反応が進行したことから,非ラジカル的な活性酸素種により進行しているものと考えられる.アリル型アルコールのジアステレオ選択性は,W2を用いた液相均一系でのエポキシ化反応の場合と同程度であった,固定化触媒では反応中の溶液への活性成分W2の溶出は認められず,触媒の再使用も可能であった. 次にRu(OH)_x/A1_2O_3を触媒として用いると,各種ニトリル類のアミド類への選択的水和反応が水のみを溶媒として効率良く進行することを見出した.本反応系は,生成物の単離操作の段階でも有機溶媒の使用を一切必要としない優れた反応系である.さらに,生成物と触媒は容易に回収でき,活性・選択性を低下させることなしに触媒の再使用が可能であった. さらに,Dawson型ポリオキソメタレート[α-P_2W_<18>O_<62>]^<6->及び一部の[WO_6]ユニットを[VO_6]ユニットに交換した置換体(D_<3h>対称)と,マクロカチオン(D_<3h>対称)との複合化を行い,ポリオキソメタレートの対称性及び負電荷の違いが,複合体の結晶構造や分子収着特性に与える影響を検討した.
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