研究概要 |
本年度研究成果概要を下記に示す。 1.オルガノイド培養によるES細胞から肝細胞への分化誘導技術の開発として,遠心力を利用して中空糸内部にてオルガノイドを形成させる中空糸/オルガノイド培養を用いて検討を行った。中空糸内部に充填されたマウスES細胞は活発な増殖性を示し,初代マウス肝細胞と比較すると約10倍に相当する1×10^9cells/cm^3-lumen volumeの高密度培養を達成した。ES細胞は中空糸内部において円柱状のオルガノイドを形成することが示された。さらに細胞増殖,オルガノイド形成能に与える中空糸膜表面特性の影響を検討するために,表面ぬれ特性の異なる2種類の中空糸を用いてマウスES細胞のオルガノイド培養を行った。その結果,疎水的表面を有する中空糸を用いた場合に高い増殖速度が示された。中空糸膜の表面特性とマウスES細胞の増殖性については現在詳細を検討中である。 2.中空糸/オルガノイド培養を行ったマウスES細胞の肝細胞への分化について検討を行った結果,オルガノイドを形成させることによりアルブミンを分泌する細胞が認められた。さらにES細胞から肝細胞への分化誘導効果が報告されている種々の分化誘導因子を添加することによりmRNAレベルでの種々の肝特異的マーカーの発現とともに,アルブミン分泌能,アンモニア除去能の発現が認められた。ES細胞から肝細胞への分化誘導効率については現在検討中であるが,高密度培養を達成した結果,中空糸単位体積あたりでは初代マウス肝細胞と比較して1/2〜同等程度のアルブミン分泌能,アンモニア除去能を発現することが示された。 以上の結果,ES細胞への中空糸/オルガノイド培養の適用は肝細胞への分化誘導手法として有望であることが示された。現在分化誘導のための最適条件を検討するとともに,ES細胞から肝細胞への分化誘導効率の定量的評価について検討を行っている。
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