研究概要 |
TRUの模擬物質としてランタニド元素を取り上げた.アルカリ性領域での反応を観測するため,電位差滴定によりH^+濃度測定および溶存化学種の組成の決定,加水分解反応の有無を調べ,Eu(III)からの発光スペクトルおよび発光寿命から第1水和圏の水の数および錯体の構造を議論した.一方で,酸性領域において複核錯体生成にともない,発光寿命減少が観測されることを発見した.中心ランタニドの脱励起機構には,周囲の-XH振動子の数(X=O,N,C)およびLn(III)-X間の距離が影響することから,イオン性N/OドナーであるPicで起こるかどうかをEu(III)の発光寿命解析を基にして検証した.配位子濃度が金属イオン濃度に比べて大過剰にある条件では,内圏水和数が1つである単核錯体[Eu(Pic)_4・(H_2O)]^-が生成されることが分かった.酸性条件で,フリーのアコイオンと1体1錯体のみが存在する場合に,軽水・重水中において発光寿命が全濃度によって変化することが分かった.これは,ランタニド-ランタニド間の相互作用があることを意味し,この方法で複核錯体生成[Eu_m(Pic)_m・n(H_2O)]^<2m+>が直接観測されることが分かった. さらに,単核から複核錯体生成について電位差滴定で組成を決定するとともに分子内エネルギー移動に関わる金属-金属間の相互作用をレーザ分光によって観測することで3核錯体の構造決定を行なった.本研究では電位差滴定によって金属イオンの加水分解よりも低いpH5付近で溶液内にH^+の放出があることを確認した上でTb(III)の直接励起(355nm)に対して3核錯体が支配的な条件でEu(III)の発光が起こることを観測し,これらの情報から錯体の構造を決定した.
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