研究課題
基盤研究(A)
本研究は、極めて自然水域に類似したアクアトロンにおいて、3つの経路(自然形質転換、接合、形質導入)による遺伝子の水平伝播の頻度、さらに伝播した遺伝子が細菌の細胞内に定着しうるのか、また各々の伝播経路に与える環境要因の影響を解析する事を目的とした。この研究目的を達成するための多くの知見が得られた。主な結果は以下の通りであった。1)ファージによって殺された細菌のDNAは細胞外の遺伝子プールになることが考えられた。自然形質転換によりプラスミドを取り込んだ細菌数はGFP遺伝子を発現していた細菌数に比べて最大100倍以上の値であった。形質転換は、環境中においてこれまで考えられていた以上の頻度で起こっていることが推測された。2)Tetrahymena. thermophila(細菌食者)の摂食によって接合伝播が抑制された。Microcystis. aeruginosa(生産者)との共存が抑制を強めた。3)水銀耐性遺伝子群を持つトランスポゾンTnMERI1から作成したミニトランスポゾンを非接合性プラスミドに組み込み、接合性プラスミドR338を持つE. coliDH1へ導入したところ、ミニトランスポゾンがR338に転移した。更にR338上のミニトランスポゾンが異株E. coliHB101に接合伝達する事が確認できた。細胞内レプリコン間での遺伝子転移を通した接合による遺伝子伝播の可能性が示された。4)自然界から分離した水銀耐性細菌を用いて、染色体に存在するTnMERI1型トランスポゾン領域および周辺領域のIR配列およびDR配列の5塩基反復配列とその周辺領域の塩基配列を調べた結果、多くの細菌においてトランスポゾンの細菌種間伝播がみられた。5)形質導入に与えるアオコの影響を評価するため、アオコの発生量の異なる培養液でEC10ファージを培養し、ファージの感染能を比較した。その結果、アオコの多い系に比べ、少ない系で有意にファージの感染能が高かった。
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