研究概要 |
高速液体クロマトグラフィーを用いて,種々の代謝産物の濃度を測定する手法を確立した。 インゲンを用いて,根に糖を投与し一時的に葉の糖の濃度を上昇させる系,個々の葉を小チェンバーに入れ,その環境を制御することにより個々の葉の環境を自由に制御できる系の開発を完了し,試運転中である。これらの系を用いた実験によって,糖濃度の増減が光合成機能へおよぼす効果が葉齢によってどのように異なるかが明確になるはずであり,17年度以降に詳細な検討を行う。 葉緑体からの還元力輸送のメカニズムには不明な点が多い。そこで,呼吸系の変化と光合成系の変化を同時に解析し,非破壊葉と単離葉肉細胞を用いて光合成と呼吸系の相互作用の研究に着手した。この相互作用にはシアン耐性呼吸(AOX)が関与している可能性が高いので,特にシアン耐性経路に注目して研究を進めている。シアン耐性呼吸経路の阻害剤およびシトクロム経路の阻害剤が光合成におよぼす影響について検討したところ,強光下では,どちらの経路を阻害した場合にも光合成速度が低下した。一方,弱光下では,シアン耐性経路を阻害した場合にのみ光合成速度が低下した。この結果は,シアン耐性経路が光合成に与える影響が大きい事を示している。高速液体クロマトグラフィーを用いて,代謝産物を定量して,その原因を追求する予定である。 C4植物における濃縮経路と炭酸固定経路のバランスや,葉内二酸化炭素拡散抵抗の測定を行うための,炭素安定同位体法による拡散コンダクタンス測定のためのシステムを構築した。また,シロイヌナズナの葉一枚について各種の光合成パラメータを測定可能なシステムの構築に着手した。
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