研究概要 |
1.葉の糖含量操作系を用いた光合成系の解析 バーミキュライトに植栽したインゲンの根にショ糖溶液を与えることにより,葉の炭水化物量を高める実験系を完成した。若い葉が炭水化物を輸入するシンク葉から輸出するソース葉に転換する時期について,葉の炭水化物量を高めたところ,シンク期に炭水化物量を高めた場合には光合成系に影響は見られなかったが,ソース期に炭水化物量を高めると光合成系の老化が促進された。炭水化物の影響は,ソース期とシンク期では異なることが確認された。 2.ガス交換/電子伝達系同時測定システムの構築 葉の両面それぞれのガス交換速度を測定するシステムを構築した。葉の表裏の気孔の挙動の違い,CAM植物葉の表裏のガス交換挙動の違いが明らかになった。裏側の気孔の方が弱い光でも開口した。また白色光よりも葉を透過した緑色光で開きやすかった。また,葉肉がさかんに光合成をする時の方が気孔がよく開いた。CAM植物では,二酸化炭素の固定と再固定が同じ細胞で行われていると考えられているが,葉の裏側で一旦固定された二酸化炭素の多くが,表側で再固定されることが明らかになった。 3.葉緑体とミトコンドリアとの相互作用 葉緑体で作られた還元力が過剰となる状況では,ミトコンドリアのシアン耐性呼吸経路が活性化されることがあきらかになった。シアン耐性呼吸経路は弱光条件下でも光合成系を保護する役割を果たしている。 4.葉の細胞間隙から葉緑体までの二酸化炭素拡散抵抗の測定,C4植物の二酸化炭素リークの測定ガス交換と炭素 世界に先駆けて,二酸化炭素拡散抵抗の温度依存性を測定した。また,C4植物を弱光条件下におくと漏れが大きくなることを見出した。この原因がRubiscoの不活化にあることを示した。
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