研究課題
1.植物体内の一部の葉の環境改変システムの完成バーミキュライトに植栽したインゲンの初生葉の環境のみを改変して栽培するシステムを完成した。植物体全体にあたえるCO、濃度を400μmol mol^<-1>程度に保ち、初生葉にあたえる空気のCO_2、濃度を150あるいは1000μmol mol^<-1>に保つと、初生葉の老化速度が著しく異なった。また、初生葉の次に展開する三出複葉は、400μmol mol^<-1>におかれているにもかかわらず、初生葉のおかれた環境に応答することが明らかになった。個体の光合成系の最適化にシステミックなシグナル伝達が重要な役割を果たしている。2.葉のエネルギー状態を反映したミトコンドリアのシアン耐性呼吸経路の活性化葉緑体で作られた還元力が過剰となる状況では,ミトコンドリアのシアン耐性呼吸経路が活性化されることが明らかになった。シアン耐性呼吸経路は弱光条件下でも光合成系を保護する役割を果たしている。また、大量のエネルギーを使う硝酸還元系を阻害するとシアン耐性呼吸経路が活性化されることも見出した。3.葉の細胞間隙から葉緑体までの二酸化炭素拡散コンダクタンスの安定同位体法による測定ホウレンソウについて葉の内部の細胞間隙から葉緑体までのCO_2、拡散抵抗の温度依存性を世界にさきがけて安定同位体法で測定した。コンダクタンスは顕著な温度依存性を示し、栽培温度によってピーク温度が変化した。タンパク性のチャネルの関与とその温度依存性の栽培環境による変化を示唆するものである。4.安定同位体法を用いたC_4光合成の効率の測定C_4植物において一旦C_4経路で固定されたCO_2がRubiscoに固定されずに漏れると濃縮経路で使用したエネルギーが浪費される。Amaranthus cruentusを用いてこの漏れ率が弱光環境下で著しく大きくなることを見出した。従来、光合成効率を議論する際には、光-光合成曲線の弱光域における傾きが用いられたが、この部分はC_4植物では直線にならずこれまでの議論は間違いである可能性が大きいことを指摘した。
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