研究課題
基盤研究(A)
本研究では、線虫C.elegansを材料とし、遺伝学・分子生物学の方法を用いて、学習行動等における餌・飢餓・忌避物質の役割を、遺伝子・細胞・神経回路のレベルで、5つの観点から研究し、以下の結果を得た。(1)匂い物質ブタノンと餌による学習における餌の信号の役割:餌とブタノンの同時体験によりブタノンへの化学走性が促進される現象(ブタノン促進)について、3株の変異体を解析した。その結果、ブタノンの嗅覚神経細胞の1つAWC-ONの感覚繊毛におけるBardet-Biedl症候群遺伝子ホモログの働きが重要だった。また、嗅覚受容体と共役するGαであるODR-3の特定のアミノ酸残基が必要であり、Gαと相互作用するタンパク質の関与が示唆された。(2)腸からの飢餓信号による感覚や成長の制御機構:腸で働き成長速度や耐性幼虫形成を制御するクラス1flr遺伝子群の遺伝子内機能解析を行った。これと拮抗するクラス2flr遺伝子群は、大腸菌に対する抵抗性も制御する。その1つflr-2遺伝子はDNA/Gremlin/Cerberus familyの分泌蛋白質をコードし、神経細胞で発現して腸機能を制御する。FLR-2と結合するZK20.1は脱糞周期を制御する。(3)耐性幼虫形成制御変異体を用いた環境悪化信号の解析:二重変異にすると構成的に耐性幼虫を形成する変異の組合せ、第三の変異によるその抑圧、変異存在下での耐性幼虫制御分子DAF-7の発現に関する多量のデータを整理した。(4)忌避物質による学習や行動の変化とその機構:忌避物質ノナノンの匂いを嗅がせると、ノナノンの忌避行動が促進する。この現象は、条件付け時の餌の存在に依存せず、ドーパミンが関与する。(5)統合回路や並列回路の遺伝学の理論:エピスタシスからカスケードを導き出す理論を並列経路まで拡張したところ、不可解だった現象を説明できた。
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