分泌タンパク質や膜タンパク質など、小胞体において合成されるタンパク質は、正しくフォールディングされて機能を獲得したものだけが、分泌経路に乗って、下流へ輸送され、正しい構造を獲得できなかったものは、品質管理機構によって適正に処理される。小胞体品質管理機構には、正しいフォールディングを促進するproductive foldingが行われる他に、もし変性タンパク質が蓄積されると、1)分子シャペロンを合成誘導して、変性タンパク質の再生を促す、2)作っても変性タンパク質ができてしまう状況下では、多くのタンパク質の翻訳を停止して、変性タンパク質の量を減少させる、3)変性したタンパク質を分解処理する、4)アポトーシスによって、変性タンパク質を生じるような細胞ごと死滅させる、という4つの戦略を備えている。 当研究室では小胞体関連分解を通じて、新生タンパク質の品質管理機構に関わる新規タンパク質EDEMの機能解析を進めている。EDEMは小胞体膜に局在するタンパク質であり、Mannose 8型糖鎖を特異的に認識すると考えられている。EDEMを導入すると、分解されるべき基質タンパク質(われわれの実験系ではα1アンチトリプシンの変異体)の分解が促進され、この分解がプロテアソームによって担われていることを明らかにした。 本年度は、正しくフォールディングできず、分解されるべき基質は、まずカルネキシン相互作用し、カルネキシン上でフォールディングを試みるが、それでも正しくフォールディングできない場合は、カルネキシンからEDEMへ受け渡され、その後、トランスロコンを通してサイトゾルへ逆輸送され、プロテアソームで分解されることを明らかにした。また、EDEMには2つのホモローグが存在し、いずれもERADを促進することを示した。また、HSP47欠損マウスではIV型コラーゲン分子に異常を来たし、その結果基底膜形成に欠陥が生じて、マウスは胎生致死に至ることを示した。
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