研究概要 |
生活習慣病を予防するには、生活習慣の改善を図る必要があるが、それには個々人の心理社会的ストレス度を把握し、ストレス度が高い場合はこれを下げる努力をする必要がある。しかし、心理社会的ストレス度を測る定量的検査法は未だに確立していない。このような情況を鑑み、我々は心理社会的ストレス度を簡便に測定しうる調査票の開発に着手した。心理社会的ストレス度が高じた際に出現する身体症状、心理変容、行動変容を調査項目とし、これらの有症状を合算することでストレス度を測る40項目からなる調査票(The Inventory to Measure Psychosocial Strees,IMPS)を作成した。同一のレベルの心理社会的ストレスが加わるとき、ストレス度の上がるヒトとストレス度の上がらないヒトがいる。ストレスがヒトに及ぼす効果に違いのあることから、ストレス耐性なるものを措定し、ストレス耐性を測る20項目からなる調査票(The Inventory to Measure Stress Tolerance Capacity,IMST)をIMPSと合わせて作成した。本研究ではストレス度を測る尺度としてのIMPSの妥当性を検討した。まず、IMPSスコアと尿中カテコラミン値、尿中メタネフリン値、尿中コルチゾール値、尿中17-OHCS値、尿中テストステロン値、尿中プレグナンジオール値などとの間に関係性を認めなかった。さらに健常者集団を対象に、IMPSスコアとドック健診結果をリンクし、IMPSと健診結果との関係性を検討した。その結果IMPSスコアと体脂肪率、HbAlc値、眼圧などとの間に関係性を見いだした。すなわちIMPSスコアが上がるにつれて体脂肪率、HbAlc値、眼圧が上がる傾向を認めた。これはIMPSスコアが健常者のストレス度を反映する可能性を示唆する。さらにIMPSとIMSTを同時に測定することから、個々人のストレス情況を多角的に把握することが可能となり、ストレス・マネジメントの方向性が導出された。今後はIMPSを用いて健常者集団のストレス度を測り、この集団にIMSTより導出されたストレス・マネジメント教育などの介入を行い、介入効果を調査する予定である。最終的には、IMPSを用いてストレス度を測り、個々人のストレス情況を踏まえたオーダー・メイドのストレス・マネジメント・プログラムを確立することを目指している。
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