研究概要 |
今年度の成果は次のように要約される。 [1]テンサイの稔性回復核遺伝子Rf1の候補配列として、前年度までに14種のORFを特定した。これらの中から、翻訳産物のミトコンドリア局在を示唆するMPL(Metalloprotease-like)遺伝子をみつけた。 [2]MPLのcDNAを単離し、開始コドンから55番目までのアミノ酸配列に対応する塩基配列(4個のMPLコピーに共通)とGFPとの融合遺伝子を作った。これをタマネギ表皮細胞で一過的に発現させ、GFP蛍光を観察した。その結果、MPL翻訳産物はミトコンドリアに輸送されるタンパク質であることが確かめられた。 [3]MPL遺伝子は、Rf1座において4コピー(ORH19,ORF21,ORF23およびORF25)存在し、クラスターを形成している。各々のMPLコピーは2個のイントロンを含み、互いに塩基配列の相同性は高い。 [4]MPL遺伝子はRf1を有する稔性回復親系統NK198の葯で転写されており、葉や根などの栄養器官での発現は見られない。またRf1をもたない雄性不稔維持花粉親系統TK81-Oにおいては、栄養器官のみならず葯でもMPLの転写は確認できなかった。 [5]TK81-OはMPLを1コピー有する。MPLレコード配列の周辺領域に関して、TK81-OとNK198との間で塩基配列を比較した。その結果、TK81-OにおいてはMPLクラスター相同域中の3箇所で大規模な欠失が起こっていることが判明した。欠失域の末端には数百〜数千塩基対の反復配列がみつかった。これらの反復配列を介して不等交叉が繰返され、その結果NK198型MPLからTK81-O型MPLが生じた可能性が高い。
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