研究概要 |
本年度は5報の研究成果を発表した. 高温環境下で栽培された水稲玄米でしばしば認められる胴割れ米の構造的特徴を走査電子顕微鏡で観察した.その結果,胴割れのタイプは横割れが多く,縦割れは重度の横割れとともに発生する場合が多いことや,割れが玄米表面に達することはないことが明らかとなった.また,横割れはおもに細胞壁を界面として発生すること,割れはデンプンの収縮にともなうデンプン粒表面のしわやアミロプラスト表面の凹みと関連していることなどが示唆された. つぎに,炊飯にともなう不完全登熟米の粒形変化と表面構造を検討した.その結果,不完全米の粒形は完全米に比べて,凹凸が激しいものや変化が少ないものなどが認められた.表面構造は,不完全米では一般に緻密であり小孔を有する厚い糊で覆われた構造が多いことが明らかとなった. コシヒカリの作付面積が全国第2位である茨城県において,県内各地で栽培されたコシヒカリの粒重・粒厚と食味関連形質との関係を検討した.その結果,2005年度産玄米は千粒重が大きく粒厚が厚く,タンパク質含有率やアミロース含有率が低く,良食味であったと判断された.また,精米のタンパク質含有率やアミロース含有率は,千粒重が大きく粒厚が厚い玄米ではそれらに規定されない場合があることが明らかとなった. 低温環境下における水稲の登熟については,著しい減収となった2003年度の宮城県産冷害水稲を中心に解析を行った.外観品質上の問題がなく,粒厚の不足のみで屑米となった粒では,胚乳側部の細胞層数の減少は認められなかったが,単粒で小型のアミロプラストや突起を有するアミロプラストが認められた.また,アミロプラストを密に蓄積した細胞の間にやや小型のアミロプラストを蓄積した細胞の存在や,細胞内に多量の細胞質が残存する構造,しわを生じたアミロプラストや,背部維管束が残存した粒などが認められた.
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