研究概要 |
1.カイコおよびクワコの性染色体の構造解析 本研究では,カイコの雌決定はW染色体のRikishi領域に支配されることを明らかにしてきた。クワコのfosmidライブラリーを用いてクワコのW染色体のRikishi領域のうち,z1(ジンクフィンガーをコードする遺伝子)の近傍をカイコのそれと比較したところ、ごく一部の配列を除いてほとんど相同性が認められなかった。より広範囲の比較により相同領域を探索することが必要である。 2.Bmdsxの性特異的スプライシング調節機構の解明 Bmdsxの第4エクソンの5'端領域に位置するシスエレメント(CE1)に結合する何らかの核内因子がBmdsx pre-mRNAのオス型スプライシングを制御する。さらに、オスの培養細胞の核抽出物を用いたUV-cross linkingを行うと、分子量80kDaと40kDa(p40)の2種類のタンパク質がCE1に特異的に結合した。これらのタンパク質のcDNAの塩基配列等を決定し,いずれも常染色体にコードされる遺伝子であると分かった。オスの培養細胞でRNAiを行った結果、p40の発現を抑制した場合にのみBmdsxのスプライシングパターンがオス型からメス型へと転換したので、p40がBmdsxの性特異的スプライシング制御因子である可能性が高い。 3.カイコの生殖細胞の性決定機構の解析 カイコ蛹期卵巣のシストサイトのステージ1〜3と2〜3の各段階より得たRNAを用い、3'SAGE解析を実施した。ステージ1へ偏って現れる遺伝子としては、ショウジョウバエのabstraktやAlyの相同遺伝子があった。また、ステージ1〜3に共通して最も多量に含まれていたのは868ntの新規な非コードRNAであった。このncRNAの部分配列を用いてdsRNAを作り、蛹の体腔中に注射したところ、一部の卵胞で形態的な異常が観察された。
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