研究課題/領域番号 |
16208009
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研究種目 |
基盤研究(A)
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
水野 猛 名古屋大学, 大学院・生命農学研究科, 教授 (10174038)
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研究分担者 |
山田 寿美 名古屋大学, 大学院・生命農学研究科, 助手 (30089859)
山篠 貴史 名古屋大学, 大学院・生命農学研究科, 助手 (00314005)
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キーワード | シグナル伝達 / 大腸菌 / リン酸リレー / 時計分子機構 / 嫌気応答 / 開花制御 / 浸透圧応答 |
研究概要 |
本研究計画に関して、本年度は大腸菌の情報伝達機構を中心に解析した。浸透圧応答に関わる二成分制御因子(OmpR)、嫌気応答に関わるリン酸リレー制御因子(SixA)、鉄の利用に関与する二成分系(BasSR)に関してそれぞれ詳細な解析を行い興味ある成果を得た。 また、高等植物(シロイヌナズナ)の時計分子機構に関して詳細な研究を行った。我々は既に時計の中心振動体を形成する一連の遺伝子群(PRR1/PRR3/PRR5/PRR7/PRR9)を発見し、その機能解析を主に遺伝学的に方法で行ってきた。本年度は、PRR7/PRR5、PRR9/PRR7、PRR9/PRR5、及びPRR9/PRR7/PRR5からなる二重及び三重遺伝子欠損植物体を作出して時計関連の表現型を詳細に解析した。その結果、PRR9/PRR7二重遺伝子欠損植物体は長周期(時計が一日30時間で動く)、一方、PRR7/PRR5二重遺伝子欠損植物体は単周期(時計が一日19時間で動く)という両極端の性質を示すことが明らかになった。次いで、PRR9/PRR7/PRR5の三重遺伝子欠損体を作成したところ、この植物がもつ時計はほぼ動かなくなってしまった。このことは、これらの遺伝子か時計の進行スピードを制御する中心振動体の一部(部品)をコードしていることを強く示唆している。これらの結果をもとに、我々は高等植物の生物時計の分子機構に関して新しいモデルを提唱した。また、これらの時計欠損植物体では、開花時期(どの季節に花が咲くか)の制御にも欠陥が生じ、開花時期が大幅に遅延した。また、一般に高等植物は赤色の光に敏感に反応して自らの背丈の伸張や形態を変化させるが(環境への適応)、変異体植物では赤色の光に対する感受性が大きく損なわれていた。このようなことから、本研究計画で我々が解析を進めてきたPRR遺伝子群は、高等植物の高次機能の一つである生物時計(花時計)やそれと関連した開花・結実時期の制御(花時計)、及び光形態形成に深く関わっていることが明らかとなった。 以上の解析から、実に多様な生物の多様な環境応答系に二成分制御系・情報伝達機構が関与していることが明らかになりつつあり、今後の成果が大いに期待できる段階到達した。
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