研究概要 |
最近になり、糸状菌(カビ)の全ゲノム配列が病原菌や有用カビの何種類かに関して決定された。その結果、糸状菌においても二成分制御・リン酸リレー情報伝達系関連遺伝子が数多く保存されていることが明らかとなった。そこで、麹カビに近縁のモデルカビであるA.nidlunsに関して、そのゲノムに見いだされる二成分制御系関連遺伝子群に関するバイオインフォーマティクス的解析を行った。その結果、本糸状菌の二成分制御系関連遺伝子群の俯瞰的リストを作成することができた。その結果を、他の糸状菌(アカパンカビなど)を比較したところ、20種類近くのHisキナーゼ遣伝子が広く保存されていることが明らかになった。これは、同じ真核微生物である酵母(1〜3種類)などに比較してはるかに多い数であった。従って、糸状菌では多様な環境応答機構に二成分制御機構が関与していることが示唆された。 しかし、Hisキナーゼの下流で働くリン酸リレ-制御因子の数は4種類と限られていた。そこでまず、これらの下流因子に着目して、遺伝学的なアプローチによりその機能解析を試みた。具体的には、これら遺伝子(SskA, SrrA, SrrB, SrrCと命名)を欠損した変異株を作成し、その生理的表現型を解析した。その結果、SskA, SrrAともに酸化ストレス応答に密接に関わっていることが示唆された。具体的には、SskA, SrrAを欠損した変異株の生育は、培地中に過酸化水素などを添加することによい顕著に阻害された。また、遺伝子発現レベルで解析したとこと、酸化ストレス応答したカタラーゼ遺伝子(CatB)などの発現誘導が著しく損なわれていた。 以上、本年度も本基盤研究の計画に基づいて研究を推進することで以上のような新しい知見を得た。
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