研究概要 |
1.放線菌の線状ゲノムの構造及び再編成機構の解析 Steptomyces griseus 402-2株の線状染色体の中央部には約2.5Mbにわたる逆位が起きている。この逆位の両末端及び親株2247の対応する領域を比較解析した結果、親株は約6kbのトランスポゾンを1コピーもつのに対して、402-2株は2コピーもつことが明らかになった。これらのデータから、親株染色体のトランスポゾンから約2.5Mb離れたところに2番目のコピーが逆向きに転移した中間体が初めに生じた後、2つのトランスポゾン間で相同組み換えが起きて402-2株が生成したことが推定された。 S.violaceoruber JCM4979株は大きさが約35kbずつ異なる390-630kbの一連の線状プラスミドをもつ。これらのプラスミドは、線状プラスミドSCP1(356kb)に環状プラスミドSCP2(31.4kb)が異なるコピー数組み込まれて生じたものと初めは推定されたが、大きさの違いがSCP2のサイズと完全に一致していなかった。最近、Chaterや私たちはSCP1の全塩基配列を決定し、またSCP2の全塩基配列もAltenbuchnerらによって明らかにされた。プラスミドラダー中のSCP1-SCP2接合部の塩基配列とこれらのデータとの比較から、stability regionが欠失したSCP2とトランスポゾンTn5714が隣り合わせで増幅単位となって、異なるコピー数SCP1に挿入されて一連のプラスミドが生成したことが推定された。 2.pSLA2-L上にコードされた二次代謝遺伝子群の機能解析とその応用 S.rochei 7434AN4株の線状プラスミドpSLA2-Lの全塩基配列の決定によって、その上にコードされたランカサイジン生合成遺伝子群の全容が明らかになった。ランカサイジンの生合成は、特異的な17員炭素-炭素骨格の形成と、モジュラー・繰り返し混合ポリケチド生合成が関与しているという2つの特徴をもつ。lkcE(ORF14,amine oxidase)の破壊株が蓄積する代謝中間体を単離し構造解析した結果、これはC2-C18結合をもたない線状中間体であることが明らかになった。完全なlkcE遺伝子をのせたプラスミドを破壊株に導入したところ、この株は線状中間体をランカサイジンにまで変換することができた。これらのデータから、amine oxidaseによってC18アミドがイミドに酸化され、それをC2が求核攻撃して17員環が形成されたことが明らかになった。
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