研究概要 |
Streptomyces griseus402-2株の染色体逆位を解析し、親株に1コピーあるトランスポゾン(Tn)が2.5Mb離れたところに逆向きに転座した後、2コピーのTn間の相同組換えによって逆位が起こったことを明らかにした。親株と変異株の3つのTnの両末端配列を決定したところ、予想通り後者にはキメラdirect repeats(GTGAC---GGAGA, GGAGA---GTGAC)が生じていた。またTnを切断しない酵素Scal+Notlで消化し、3つのTnをCHEFで巨視的に確認した。さらに、親株のTnの全塩基配列(6.5kb)を決定し、その中にtransposase, resolvase/recombinase, transmembrane protein, ABC transporter, GntR-family transcriptional regulator遺伝子を同定した。こうして、放線菌において初めて発見された染色体逆位の形成機構を明らかにした。 Streptomyces rocheiの線状プラスミドpSLA2-L上にコードされた多くの制御遺伝子の破壊株を解析し、srrXがγ-butyrolactone(GB)の生合成遺伝子であり、SrrAがGBリセプターであることを明らかにした。SrrA蛋白とpSLA2-L DNAのSau3Al部分消化物の結合実験によって、制御遺伝子srrB, srrWのpromoter領域を取得した。SrrAとSARP遺伝子srrYの結合をgel retadationによって確認し、さらにfoot printingによってSrrY上流に2つの結合サイトを同定した。そこにはGBリセプターの結合領域に共通するパリンドローム配列が見つかった。こうして、srrX-->srrA-->srrYのシグナル伝達経路が、二次代謝制御カスケードにおいて中心的な役割を果たしていることを明らかにした。 LC骨格の形成過程において、LkcC-KSが4回繰り返して(iteratively)使われ、LkcA-KS, LkcF-KS1, KS2, LkcG-KSは1回のみ(modularly)使われるというmodular-iterative mixed polyketide biosynthesis仮説を先に提唱した。これを証明するために、3つのKRドメイン(LkcC-KR, LkcF-KR1, 2)の活性中心にあるSer, Tyrの点変異株を作製したが、期待した代謝産物は得られなかった。lkcFとlkcGの融合株がLCを生産したので、2つの遺伝子は繰り返しに関与していないことが示唆された。また、lkcクラスターのlkcA-EをS.lividans染色体に組み込み、lkcF-Oをプラスミドに乗せて導入したところ、LCを生産した。この結果はlkcクラスターがLC生合成に必要な全ての遺伝子を備えていることを示した。これらのデータはいずれもLkcCが繰り返し使用されるという私たちの仮説を支持する。
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