研究概要 |
(1)人工接種源の開発では,マツタケ,ホンシメジ,ショウロ,アミタケ,ヌメリイグチ,ならびにチチアワタケの6種菌根菌の菌糸体を寒天培地上で前培養したのち,中心に寒天培地を埋設したポット滅菌土壌に接種した.その結果,栄養分をあまり含まない土壌中でもこれら菌種の旺盛な菌糸増殖が見られる新たな菌糸培養法を開発した.このうちショウロとアミタケでは,この菌糸体が無菌マツ幼苗に感染し菌根を形成する能力があることを確認した. (2)菌根苗の作出では,予め若干の細菌を含む土壌条件下でもマツタケ培養菌糸とアカマツ実生の問で菌根形成を生じうることが明らかとなり,屋外での菌根苗の増殖に関係する重要な知見が得られた.また,アカマツとマツタケの菌根苗の生長改善を目的に菌根合成下でエビオスを追加投与した結果,特に成長が劣る苗で生長量の回復が図られることを明らかにした.さらに,これまで実験例のないチョウセンゴヨウ,ヒメコマツ,およびドイツトウヒの無菌苗を用いた菌根合成に成功し,幅広い植物種をベースにマツタケ菌根苗の人工作出が技術的に可能な事を明らかにした. (3)人工接種源の林地埋設では,モデル実験的にクリタケ菌糸体の土壌中での挙動を調査した結果,一般には把握されていない菌糸束を旺盛に形成し,これがジェネットの拡大に重要である傍証を得ることができ,腐生性きのこ類の新たな林地栽培法につながる科学的知見を得ることができた. (4)新規菌株の確立では,長野県内のアカマツ林産とツガ林産のマツタケより菌株を確立し,同県クヌギ林産のバカマツタケより菌株を確立した.また,アミガサタケとチャナメツムタケでは,それぞれ34株と6株を収集し,寒天培地と鹿沼土を用いた2層培養法を試験中である.
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