研究概要 |
1.マツタケとショウロにおいて,二層培養法を用いて土壌接種源を大量に調製することに成功した.それら接種源を野外の自然土壌条件下でアカマツ実生に接種した結果,ショウロでは外生菌根の形成に成功したが,マツタケでは菌根が確認できなかった.菌種や土壌条件により,本技術が実用的な場合とそうでない場合があることが明らかになった. 2.アミタケ,ショウロ,シモフリシメジ,ホンシメジにおいて,菌根苗を直接野外条件下に大量に植え付けた結果,アミタケ,ショウロ,シモフリシメジでは,菌株によっては十分な菌根の増殖が見られ,菌根苗定着の実用的な技術になりうる事を明らかにした. 3.マツタケ類、イグチ類、チチタケ類を含む39種64菌株について菌根苗をポット培養し多くの苗でガラシ温室下での長期順化に成功し,ポット土壌の温度制御によりミネシメジとスミゾメシメジで子実体発生に成功した. 4.ハルシメジでは,宿主植物であるウメの実生根系にも菌根が形成されることを明らかにした.また,苗木根系に胞子散布することで,菌根を形成させうる事も明らかにした.これにより,ウメ苗木と胞子を用いた実用的な菌根苗作出が可能と考えられた. 5.マツタケのシロに接してアクリルチューブを埋設し,ミニリゾトロンを用いて継続観察した結果,チューブ近傍でのシロの回復は必ずしも速やかではなく,他の菌根菌が散発的に増殖しうることを明らかにした. 6.ミニリゾトロンを用いてクリタケの土壌中での動態を長期継続観察した結果,菌糸束の発達,分枝,分解と再形成といった動的挙動があり,菌糸束が地中での菌糸体拡散において重要な役割を果たしうることを明らかにした.発達した菌糸束の顕微鏡観察により,主に外層と内層からなる二重構造が形成されることが明らかにした.
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