研究課題
本課題は、珪藻類に感染する環境常在性ウイルスについて生理・生態・分子生物学的知見を集積し、ノリ養殖に対して甚大な色落ち被害をもたらす珪藻赤潮を量的・質的に制御するための技術開発に資することを目的とする。昨年度報告した環状1本鎖(部分的に2本鎖)DNAゲノムを持つキートケロス・サルスギネウム感染性ウイルスCsNIVのゲノムを再解読し、全鎖長が6000塩基であることを証明するとともに、6個のORFが存在する可能性を推定した。このうちの一つはサーコウイルスの複製酵素遺伝子に低い相同性を示したが、その他には顕著なBLASTヒットがみられなかった。この結果から、CsNIVがきわめて新奇なウイルス群に属する可能性が改めて示唆された。また、キートケロス・デビリに感染する1本鎖DNAウイルスCdDNAV、およびキートケロス・ネオグラシリスに感染する1本鎖RNAウイルスCnRNAVを単離することに成功し、その基本的特性を解明した。電顕観察の結果、両者は各宿主細胞質内での蓄積が観察された。CnRNAVについては、既知の藻類ウイルスと大きく異なる溶藻パターンを示した点がとくに注目された。また、同ウイルスは収量が10^<10>感染単位/mlときわめて高く、感染機構等を分子構造レベルで詳細に解析するための好適な珪藻-ウイルス系としての研究応用が期待された。これらの珪藻感染性ウイルスはいずれも粒径40nm未満の小型ウイルスであり、Phycodnavirusタイプの大型2本鎖DNAウイルスはこれまでのところみつかっていない。次年度は、珪藻リゾソレニア・セティゲラ感染性ウイルスRsRNAVの全塩基配列を決定し、共進化的な観点から他のウイルスとの系統解析による比較を行うとともに、珪藻感染性ウイルスの現場動態について中間的とりまとめを行う。
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