研究概要 |
IRSをbaitとしたyeast two-hybrid screening及びIRSの共免疫沈降物のプロテオミクス解析で20種類ほどのIRSAPsの同定に成功し,IRSAPは性質や機能から,IRSの細胞内局在を決める輸送因子,IRSを介してインスリン様活性を発現する仲介因子,IRSのチロシンリン酸化や下流シグナルを修飾する修飾因子に大別できた。同定したIRSAPを強制発現したIGF/Ins標的細胞では,IGF/Ins刺激に応答したIRSを介したシグナル・生理活性が修飾されるなどの研究成果から,多くのIGF/Ins標的細胞では,細胞外因子の刺激に応答して起こるIRSとIRSAPの相互作用の変化を介して,IGF/lns依存性IRSのチロシンリン酸化・生理活性が増強あるいは抑制が起こると考えられた。一方,IRS-1とIRS-2の機能の違いも明らかになった。IRS-1とIRS-2は,それぞれAP47とAP50という異なる輸送因子に相互作用,endosomeと細胞膜付近と異なる部位に運ばれる。脂肪細胞におけるIns活性を例にすると,endosome画分に存在するIRS-1はGLUT4の細胞膜移行の誘導,細胞膜画分のIRS-2はGLUT4の膜輸送活性の誘導を引き起こすことがわかった。また,筋芽細胞や脂肪前駆細胞は分化誘導の過程でIRS-1とIRS-2の量が異なる様式で変動すると同時に局在が変化,MCF-7細胞では核付近にあるIRSた1が増殖を誘導,細胞膜付近のIRS-2が細胞遊走を仲介していることも明らかになった。一連の結果は,細胞内でIRSは特定の部位に輸送され,その部位に特徴的な複合体IRSomeを形成,特異的な作用を発現・調節していることを示している。
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