研究概要 |
本年度は4年計画の3年目に当たるが、研究は順調に推移している。以下、消化管炎症と運動機能について得られた成果を項目別に整理する。 1)サイトカインの関与:TNF-αとIL-1βを中心として検討した。筋層炎症の発現にTNF-αが最重要因子として関与すること(Neurogastro Motility,2006(a))、平滑筋細胞のミオシン脱リン酸化酵素制御タンパク質であるCPI-17の低下をTNF-αがもたらすこと(Am J Physiol, in press(a);Neurogastro Motility,2006(b))、さらにIL-1βが筋層に存在するマクロファージの活性化を介して平滑筋細胞増殖に抑制的に働くなどの事実を明らかにした(Am J Physiol, in press(b))。 2)カハール介在細胞への影響:消化管運動のペースメーカー機能を担うカハール介在細胞の炎症時の変化(ネットワーク構造の破壊)を、TNBS(クローン病モデル)、デキストラン硫酸(潰瘍性大腸炎モデル)および実験的腸管虚血モデルを使って証明した(Hist Cell Biol,2007;Neurogastro Motility,2006(c);J Surg Res,2006(a))。 3)NOD分子の変動と機能:クローン病原因遺伝子とされる異物認識分子NOD2/CARD15の腸炎モデルにおける変動(J Vet Med Sci,2006(a))、ならびにマクロファージにおけるLPS刺激時の発現変動(J Vet Med Sci,2006(b))を明らかにした。 4)その他:最近炎症に深く関わることが明らかとなりつつあるプロテアーゼ活性化受容体(Protease activated receptors : PARs)について検討したところ、デキストラン硫酸誘発腸炎において平滑筋細胞のPAR2受容体が減少することを明らにした(Br J Pharmacol,2007)。 以上、10報の原著論文を発表するとともに、4報の「炎症と筋層免疫に関する総説」を医学(臨床)ならびに薬理学領域め雑誌に発表することが出来た。腸管の筋層炎症という新しいジャンルの研究が確立しつつあると考えている。
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