研究概要 |
本年度は4年計画の最終年度をむかえ,研究は順調に推移して当所の目的を達成し終了できた。以下,消化管炎症と運動機能について得られた成果を項目別に整理する。 1)サイトカインの関与:TNF-αとIL-1βを中心として検討してきた。本年度は,平滑筋細胞のミオシン脱リン酸化酵素制御タンパク質であるCPI-17の低下をTNF-αがもたらすこと(AmJPhysiol,2007-1),さらにIL-1βが筋層に存在するマクロファージの活性化を介して平滑筋細胞増殖に抑制的に働くなどの事実を明らかにした(AmJPhysiol,2007-2)。また,筋層炎症におけるカハール介在細胞ならびに神経ネットワークの障害について主として形態学的手法により証明した(Histochemisfry and Cell Biology,2007)。 2)消化管常在型マクロファージの関与:筋層間に存在する常在型マクロファージの生理機能を調べる目的で,その食食能と細胞活性化機構について,特に細胞内Ca濃度との関係について明らかにした(J Vet Med Sci,2007)。 3)消化管炎症抑制物質の探索:タウリンならびに米糠由来の植物ステロール(γオリザノール)の抗炎症作用を,潰瘍性大腸炎のモデルとされるデキストラン硫酸誘発腸炎ラットを用いて検証した(Amino acid,2008;Br J Pharmacol,2008)。γオリザノールについては,さらにマクロファージ細胞を用いてその作用がNFκB抑制に基づくことを証明した。 以上,9報の原著論文を発表するとともに,2報の「炎症と筋層免疫に関する総説」を医科学ならびに消化器系臨床の商業誌に発表することが出来た。本研究により腸管の筋層炎症という新しいジャンルの研究を確立できたと考えている。特に消化管平滑筋の収縮機能の変化についての知見は新しく,世界をリードできた研究との自負がある。
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