研究課題/領域番号 |
16208032
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
橋床 泰之 北海道大学, 大学院・農学研究院, 教授 (40281795)
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研究分担者 |
岩橋 均 (独)産業技術総合研究所, ヒューマンストレスシグナル研究センター, 所長 (60356540)
玉井 裕 北海道大学, 大学院・農学研究院, 助教授 (50281796)
原口 昭 北九州市立大学, 国際環境工学部, 助教授 (50271630)
松浦 英幸 北海道大学, 大学院・農学研究院, 助教授 (20344492)
俵谷 圭太郎 山形大学, 農学部, 助教授 (70179919)
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キーワード | 中強酸性熱帯泥炭土壌 / 永久凍土 / 微生物生育促進因子 / 単生窒素固定細菌 / 非菌根性植物生育促進真菌類 / DNAアレイによる菌相追跡 / 窒素固定亢進因子 / 伝統農法 |
研究概要 |
高度負荷土壌のうち、酸性熱帯泥炭土壌ならびに森林火災にあったタイガ林永久凍土を中心に、それらに生育できる植物の根面や種子に付く微生物の機能性とその挙動をみた。また、これまで分離してきた機能性微生物が植物表面でどのような化学シグナルを発し、周辺の微生物群集と情報交換を行っているかを調べた。主な研究成果は以下のものである。 1)インドネシアの熱帯泥炭森林荒廃地に分布するパイオニア草本植物Xyris complanata根圏から分離したSphingomonas sp. EC-KO85株が他のauxotrophやdiazotrophの生育をほう助していることを以前から見いだしていたが、今年度、この微生物生育促進因子の単離・構造決定に成功した。この活性本体は、3-hydroxybutyricacidの直鎖状の4量体であり、これはSphingomonas sp. EC-KO85自身がつくる菌体外ポリマーの部分分解物として周辺に放出されているらしい。この成果は、Bioscience,Biotechnology and Biochemistry、2006年10月号に速報として掲載された。 2)東シベリアのカラマツ・ヒース林における窒素供給源特定研究を行い、低栄養要求性単生窒素固定性Burkholderia属細菌群集は0.02〜0.05%の炭素源(マンニトール)で十分に1%炭素源と同等かそれ以上のアセチレン還元活性を示すことが分かった。また、部分的に生育するトナカイゴケの水抽出物に単生窒素固定細菌群集窒の素固定能を強力に亢進する化合物が存在することを見いだした。さらに、これらの窒素固定能力は中-アルカリ性(pH6.0以上)では極端に抑えられ、弱酸性(pH5.0付近)では極めて高い窒素固定能を発揮した。 3)中央カリマンタンの高度負荷土壌においては、植物種子につく非菌根性のカビ(ありふれたFusariumやPenicillium)がXyris complanataを始め、多くの酸性耐性植物の発芽と生育をサポートしていることを実験的に証明した。 4)Sphingomonas sp.を中心とした機能性細菌検出用マクロDNAアレイでの解析の結果、硫酸酸性土壌における酸性耐性植物(現地イネを含む)は根圏生機能性微生物を周辺の植生から譲り受けており、現地の独得な農法はこの微生物水平伝播を妨げない農法として発達してきたことが示唆された。この研究成果は、Bioscience, Biotechnology and Biochemistry、2007年2月号に速報として掲載された。 翌年度繰り越しによって23万円を4月のマレーシア調査に使用し、それによって雨季終盤の酸性熱帯泥炭の土壌を採取することができた。この土壌を用いて、窒素循環に関わる脱窒細菌群集がどのように雨季に成熟するかを明らかにする貴重なデータを入手することができた。
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