研究概要 |
我々は大気中超微量活性窒素(NO_x)が、「植物ホルモン様」作用をもつことを見出した。本研究はこの発見に基づき、大気中に含まれる各種活性窒素(特にNO,NO_2)のシグナル作用の統括的理解、応答遺伝子の解明を目指し、バイオマス生産、環境修復機能のガス制御を可能とする新しい農業生産シグナルの創出を目指す。本年度はまずモデル植物シロイヌナズナを実験対象植物とした。シロイヌナズナは、全ゲノムが決定されており、応答遺伝子の解明が最も容易な植物の一つである。新規購入の超低濃度NO_x制御チャンバー(対照区)および現有の暴露チャンバー内(実験区)で22℃、70%相対湿度、340ppm CO_2の条件下で栽培した。対照区NO_x濃度は<5ppbに制御し、実験区では、種々のNO_x濃度に設定した。栽培期間は、4週間とした。植物体当たりのバイオマス量、全葉面積、C,N,S,P,K,Ca,Mg量を定量した。各元素は、EA/MS法、ICP-AES法およびICP-MS法により分析した。その結果、バイオマス量、全葉面積、C,N,S,P,K,Ca,Mg量を1.5-2倍増加させるに有効な活性窒素ガスの濃度と組成をほぼ絞り込むことができた。また、^<15>NでラベルしたNO_xを与え、根からは非ラベルの硝酸を与え、植物体における全窒素に占めるNO_x由来のNの貢献度を定量した。その結果、シロイヌナズナにおいて、NO_x由来のNは全窒素の3-4%を占めるに過ぎず、窒素源としての貢献はわずかであり、NOxはなんらかのシグナル用物質(vitalization signal)として作用するものと解釈された。他方、リアルタイムPCR法により、活性窒素ガス処理で発現変動する遺伝子の解明をめざした。
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