研究課題
アルツハイマー病の発症因子とされるβ-アミノイドは、前駆体タンパク質APPの連続する2回の切断によって生じる。APPは単独で細胞に存在する場合、速やかに細胞外におけるα-もしくはβ-セクリターゼによる切断を受け、これが引き金となり膜内γ-セクリターゼによる切断を受ける。昨年度までの研究で、APPは神経細胞では細胞内アダプター分子X11Lとの結合を介して膜タンパク質Alcadeinと三量体を形成していることが判明した。三量体中では、APPのみならずAlcadeinの代謝も著しく安定化した。X11Lの解離によりAlcadeinがAPPと協調的に代謝を受けることからAlcadeinの一回目の切断酵素の同定を行った。その結果、α-セクリターゼであるADAMファミリーはAlcadeinの切断をしたが、β-セクリターゼは切断しなかった。Alcadeinはα、β、γ、の3種類のアイソフォームがあるが、ADAMファミリーによる基質選択は同一ではなかった。一方、γ-セクリターゼで切断されるサイトの同定をTOF-MSを用いて行った。Alcαに関しては、主要な切断サイトの他に2アミノ酸C-末端側へずれた切断も行われていた。家族性アルツハイマー病の変異を持つプレセニリン(γ-セクリターゼの触媒ユニット)を発現する細胞では、C-末端側にずれた切断産物の量が増加し、さらに2アミノ酸ずれた代謝産物も同定した。これらの結果はAlcadeinのγ-セクリターゼによる切断もAPPと同様に制御されていることを示し、アルツハイマー病患者では、長鎖Aβの生成とともにより長いAlcadein代謝産物が産生していることを示唆した。
すべて 2005
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Journal of Biochemistry 137
ページ: 147-155
Journal of Biological Chemistry 280
ページ: 42364-42374