研究概要 |
バイオメタルの生物学的機能と毒性を、それらの生体中における化学形態と関連付けることによって化学反応レベルで解明することを目的としている。ヒ素の代謝過程では、臓器や体液中に存在する還元型活性硫黄(sulfane sulfur)の関与の機構を,硫黄含有ヒ素代謝物の構造を解明するなどにより新たな展開を得た。 セレンの代謝機構の解明にあたっては、セレン栄養源となる各種のセレン化合物を各種の安定同位体で識別標識し、実験動物に投与した。セレンの主たる尿中代謝産物であるセレン糖を標識し,ラットに投与した結果、一部がセレン糖のまま各種臓器に分布し,セレン酵素に再利用されることを明らかにした。また、同位体標識した亜セレン酸の過剰投与により,体内の天然存在比セレンを駆逐した後、各種安定同位体で識別標識した各種セレン化合物を同時投与する新たな実験手法を開発し,代謝機構の解明に利用する新規の手法の利用に着手した。本手法により,従来の実験では得られなかった様々な情報が簡便な実験で得られるものと期待される。^<76>Se-selenosugar,^<77>Se-selenomethionine,^<82>Se-methylselenocysteineや、^<76>Se-,^<77>Se-,^<80>Se-,^<82>Se-seleniteあるいは-selenateを合成し、これらを組み合わせて投与した,代謝実験のデータを解析している。 銅については、銅の欠乏時におけるメタロチオネインの役割について,実験を続けるとともに,メタロチオネインの核内移行の機構にも取り組み、この機構の解明に至ると思われる現象の解析にあたっている。 これらの機構解明にあたって、生体内におけるバイオメタルの化学形態別分析(スペシエーション)に基づくメタボロミクスの位置づけを説明する総説を執筆し、特別講演などでも普及を図った。
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