研究概要 |
平成19年度においては、微量金属の生体内における化学形態を明らかにすること(スペシエーション)によって各金属類の生物学的役割や毒性発現機構を解析しようという新たなアプローチ(メタロミクス)に基づき、以下のように研究を実施した。 セレンに関する研究:セレン化合物、特にセレノアミノ酸は抗癌活性を有する事が報告されている。本年度は、本研究課題において開発した安定同位体マルチラベル法による代謝解析系を、セレン化合物の抗癌活性の本体と考えられているメチルセレノールのプリカーサーであるメチルセレノシステインに適用した。安定同位体でラベルしたメチルセレノシステインを実験動物に連続投与することで、その体内動態・代謝機構を詳細に検討した。また継続して行っていたメチルセレノールの生体内でのメチル化・脱メチル化反応についてもさらなる検討を行い、各臓器においてメチル化(排泄)・脱メチル化(利用)のバランスが酵素的に調節されていることを示した。また、メチルセレノール脱メチル酵素のアッセイ法を確立し、その部分精製を行った。 ヒ素に関する研究:昨年度までに、無機ヒ素の代謝物として生体内で生成する有機ヒ素、特に硫黄を分子内に含む含硫有機ヒ素についてそれらの体内動態・毒性発現機構を検討してきた。本年度には、その含硫有機ヒ素と蛋白質との相互作用をin vitro/vinoで詳細に検討し、その相互作用の様式が元の無機ヒ素化合物とは全く異なることを示し、特殊な毒性発現機構を有することを明らかにした。 さらに現在までの研究でその存在が示されてきたヒ素結合蛋白質の単離・同定を行い,血漿中のヒ素化合物がジメチルヒ素-ヘモグロビンーハプトグロブリンの複合体として存在していることを示した。
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