研究課題
平滑筋は循環器や消化管などそれ自体で臓器を形成しているほか、血管としてあらゆる臓器の機能に関与している。従って、薬理学一般にとって平滑筋の収縮とその制御に関する基礎研究はきわめて重要と考えられている。その収縮や遊走では、ミオシンとアクチンの相互作用が原動力となるが、まず、ミオシンが活性化されなければならないとされている。ミオシン活性化機序として、ミオシン軽鎖のリン酸化が広く浸透しているが、近年の技術革新により種々のデータが得られ、非(脱)リン酸化のままでの収縮の起こることが認識されるようになった。また逆に、リン酸化した状態でも弛緩の起こりうることも判ってきた。これは新しい収縮制御機序の存在することを意味する。これまでの基礎研究により、平滑筋ミオシンを非(脱)リン酸化のままでも活性化するペプチド及び生理活性脂質を同定し、その生理機能を明らかにした。その逆に、平滑筋ミオシンをリン酸化のままでも不活性化する物質についても明らかにした。当該研究のパートIIとは、この研究を発展させることを意味するが、具体的には、本研究ではこれらの因子を細胞内情報伝達系に取り込むと共に、血管れん縮など血管病態における役割の解明を目的としている。血管平滑筋を大量に培養して、コラーゲンゲル内に封じ込めると人工平滑筋となり、張力を測定することができる。スフィンゴシールフォスフォリールコリン(SPCと略す)は脳血管れん縮の起因物質として知られているが、血管平滑筋遊走を引き起こす物質もある。当該科研費により、人工平滑筋の収縮も引き起こすことが判った。この収縮はミオシン特異的阻害薬ブレビスタチン(BLB)により弛緩し、遊走で調べたBLBの阻害効果を、収縮でも確認することができた。SPC処理によりミオシン軽鎖はリン酸化した状態が続くが、リン酸を受けた状態でも弛緩の起こることが判明した。
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J.Pharmacol. Sci. 102
ページ: 339-42
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