研究課題
基盤研究(A)
我々は、細胞外マトリックスそして、サイトカインとしての特徴を有するオステオポンチン(OPN)の構造と機能に関する研究を行ってきた。この3年間の研究により次の成果をあげることができた。1)OPNの発現増強が、難治性疾患である関節リウマチ、肝炎、動脈硬化症のみならず、クローン病、間質性肝炎の悪化に関与していることを明らかにした。2)OPNの発現を特異的に抑制することができるsmall interference RNA (siRNA)を開発した。In vitroにおいては、ヒト癌細胞の浸潤能を抑制し、in vivo投与においては、Th1型免疫病である肝炎や網膜ぶどう膜炎を治療することが可能であった。3)臨床応用可能な抗OPN中和抗体の開発において、ヒトとマウスにおいてOPN分子のアミノ酸配列が若干異なることから、動物実験において、中和活性の高い抗体を開発しても、その相同配列を認識する抗ヒトOPN抗体が充分な中和活性を発揮するか否かは、予測不能であった。我々はマウス及びヒトOPNの両方に反応する中和抗体を開発した。この抗体により関節リウマチ及び癌転移を抑制できることにより、今後治療用抗体としての開発が期待できる。4)OPN分子内S162VVYGLR168は、α4及びα9インテグリンにより認識されるが、各残基の役割につき検討した。Rl68はα4及びα9インテグリンに抑制的シグナルを伝達した。その残基をアラニンで置換することにより、α4を介する細胞遊走を著明に促進することを見出した。5)V164,Y165,Ll67はα4及びα9インテグリンを介する細胞接着及び遊走に必須であった。R168はα9インテグリンを介する細胞接着に、一方Vl63はα4インテグリンを介する細胞遊走に必須であった。すなわちこれらのアミノ酸をアラニンに置換すると当該機能の著名な低下を認めた。
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