研究課題
1.小児の神経発達、行動障害、アレルギーと内分泌かく乱物質の影響を検討する目的で妊婦と小児を対象に前向きコホート研究を実施している。妊娠26〜35週の妊婦514名を対象として、ベースライン時、1歳6ヶ月時、3歳6ヶ月時の母の食習慣・生活習慣・職業歴・居住環境・育児環境等を詳細に調べた。内分泌撹乱化学物質として母体血中ダイオキシン類370名、PCB異性体類270名、PFOS/PFOA447名の測定を行い、アウトカムとの関係を検討している。小児の神経行動発達検査は、生後6ヶ月、1歳6ヶ月時の検査が終了し、3歳6ヶ月時のKaufman Assessment Battery for Children(K-ABC)を継続して追跡調査中である。2.母体血中ダイオキシン類の異性体濃度と出生体重との関連の検討では、Total PCDFsにおいて出生体重と負の関連が伺えた。この傾向は男児において顕著であった。一方、毛髪水銀濃度と出生体重との関連では、正の関連が伺えた。母体血中ダイオキシン類濃度と子宮内胎児発育遅延(IUGR)との関連の検討では、Total PCDFsにおいてIUGRと負の関連が伺えた。このことから、ダイオキシン類の中でも特にPCDFs類において、出生体重・IUGRに負の影響を及ぼすことが示唆された。3.マイクロアレイ法を開発して、CYP1A1 I462V、CYP1B1 L432V、GSTP1 I105V、AhR R554K遺伝子多型について妥当性を得ることができた。妊婦263人の喫煙状態・AhR R554K遺伝子型が血液中PCB・ダイオキシン類TEQ値に影響を及ぼすことを見出した。またタバコ煙中の化学物質であるPAHsの代謝や解毒に関与するAhR R554K遺伝子野生型、CYP1A1 MspI遺伝子変異型およびGSTM1遺伝子欠損型を持つ喫煙妊婦では新生児体重および身長が有意に低下することが認められた。このことから、遺伝子型に起因する喫煙曝露への感受性が胎児発育に影響を及ぼすことが示唆された。4.母体血ダイオキシン濃度と臍帯血IgEとの関連検討で、33'4'4'-TCB(#77)にて有意な正の相関が得られた。以上より、胎内におけるバックグランドレベルのダイオキシン類曝露は免疫系に何らかの影響を及ぼす可能性が示唆された。5.今後、さらに児の発達と、感染症、アレルギーへの罹患との関係を追跡する予定である。
すべて 2006
すべて 雑誌論文 (5件)
Mol Hum Reprod 12(2)
ページ: 77-83
Environ Health Perspect 114(5)
ページ: 773-778
J Reprod Immunol 70(1-2)
ページ: 99-108
日本衛生学雑誌 61(1)
ページ: 19-31
ホルモンと臨床 54(3)
ページ: 73-82