研究概要 |
本研究の目的は,現在の分子遺伝学の最新の知見を診療に結びつける最善の方法を築きあげることにある.この課題を実現するために,次の3点を柱としている.1.遺伝性神経疾患の遺伝子診断をDNA microarrayを用いてハイスループットで行うシステムの構築,2.疾患関連遺伝子の体系的解析による孤発性神経疾患へのアプローチ,3.神経疾患の患者毎の臨床表現型の多様性の背景を探索する.この目的を効率よく達成する方法として,DNA microarrayを用いた疾患関連遺伝子のresequencingのシステムの構築を進めている.本年度の研究で,パーキンソン病,アルツハイマー病,筋萎縮性側索硬化症,副腎白質ジストロフィー,家族性痙性対麻痺などを対象としてresequencingを目的とした,DNAマイクロアレイを設計した.これまでに制作したDNA microarrayについて,塩基配列決定の精度が通常行われるdinucleotide chain terminator methodと同等であることを確認し,実際に,痙性対麻痺症例に対しての応用を行った.これまでに43例の痙性対麻痺症例に対し網羅的な解析を行い,7例のSPG4症例を見出し,日本人においては最も頻度の高い疾患であることが見出された.この他に,1例のSPG3A症例を見出した.SPG4症例の中で2例については,家族歴が認められず浸透率の低い変異の存在が示唆された.以上のように,DNA microarrayを用いたresequencingシステムは岩馬手効率のよい網羅的解析法であることが示され,アルツハイマー病,パーキンソン病,筋萎縮性側索硬化症,副腎白質シストロフィー,家族性痙性対麻痺に対する網羅的解析方法を確立することができた.
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