研究概要 |
本研究では、縁取り空胞性ミオパチー(rimmed vacuolar myopathy : RVM)の代表的疾患縁取り空胞を伴う遠位型ミオパチー(distal myopathy with rimmed vacuoles : DMRV)と自己貪食空胞性ミオパチー(autophagic vacuolar myopathy : AVM)の分子病態解明と治療法の開発を目指している。 これまでの研究から、DMRVでは、GNEミスセンス変異により、低シアリル化を来していること、少なくともin vitroでは、GNE代謝産物またはシアル酸の投与により回復可能であることを示してきた。そこで、本邦DMRV患者で最も多いc.1714G>C(V572L)変異を有するヒトGNE transgeneを導入したマウスとヘテロ接合型GNEノックアウトマウスを交配させ、GNEノックアウト・バックグランドで、V572L変異を有するGNE-/-,TgGNE c.1765G>Cを作製した。このマウスは、生後32週以降より、筋力低下、CK値上昇、骨格筋内での小角化線維出現とアミロイド沈着を認め、さらに54週以降で、縁取り空胞を認めた。このことは、我々が世界で初めて、DMRVモデルマウスの作製に成功したことを示している。興味深いことに、我々のマウスでは、ヒトと異なり、前頚骨筋よりも腓腹筋が、またハムストリングよりも大腿四頭筋が強く侵されていた。これは、マウスが4足歩行をしているためである可能性がある。また、心筋にも線維化が認められたが、これは、最近DMRVで心筋も侵されることが示されており、興味深い。 今後は、モデルマウスの表現型の詳細を明らかにして、さらに病態研究を発展させるとともに、シアル酸投与による治療法開発実験を早急に開始する予定である。
|