研究概要 |
本研究では、縁取り空胞性ミオパチー(rimmed vacuolar myopathy : RVM)の代表的疾患縁取り空胞を伴う遠位型ミオパチー(distal myopathy with rimmed vacuoles : DMRV)と自己貧食空胞性ミオパチー(autophagic vacuolar myopathy : AVM)の分子病態解明と治療法の開発を目指してきた。 本邦DMRV患者で最も多いc.1714G>C(V572L)変異を有するヒトGNE transgeneを導入したマウスとヘテロ接合型GNEノックアウトマウスを交配させ、GNEノックアウト・バックグランドで、V572L変異を有するGNE-/-,TgGNE c.1765G>Cを作製した。このマウスは、生後30週以降より、筋力低下、CK値上昇、骨格筋内での小角化線維出現とアミロイド沈着を認め、さらに50週以降で、縁取り空胞を認めた。また、ほぼ全ての臓器で低シアリル化を来していた。このことは、我々が世界で初めて、臨床的・病理学的・生化学的にDMRVを再現するモデルマウスの作製に成功したことを示している。さらに、これまでアミロイド沈着と縁取り空胞形成のどちらがより本質的な変化であるかについて議論があったが、アミロイド沈着が縁取り空胞形成に先行することが初めて明らかとなった。 AVMについては、LAMP-2欠損症において相同性の高いLAMP-1の過剰発現により治療可能かどうかを見ることを目的として、LAMP-2ノックアウトマウスでのLAMP-1の過剰発現を行なう予定でいる。本研究ではその基礎研究として、LAMP-2ノックアウトマウス骨格筋の表現型を解析すると共に、LAMP-1過剰発現Tgマウスを作製した。LAMP-2ノックアウトマウス骨格筋では、筋線維内にリソソームの集積など、ヒトLAMP-2欠損症で見られる病理像を再現していた。LAMP-1過剰発現Tgマウスは、はぼ正常と同様に産出し、形態学的には異常は認められなかった。骨格筋においてタンパク質レベルで数倍のLAMP-1の発現が認められた。
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