本研究では、縁取り空胞性ミオパチーの代表的疾患である自己貧食空胞性ミオパチー(autophagic vacuolar myopathy : AVM)と縁取り空胞を伴う遠位型ミオパチー(dista lmyopathy with rimmed vacuoles : DMRV)の分子病態解明と治療法の開発を目指してきた。 AVMについては、LAMP-2欠損症において相同性の高いLAMP-1の過剰発現により治療可能かどうかを見ることを目的として、LAnfP-2ノックアウト(KO)・LAMP-1過剰発現マウスを作製した。まず、LAMP-2KOマウス骨格筋の表現型を解析した。トレッドミルでの生理学的テストでは、最高運動能力では野生型マウスと差がなかったものの、持続運動能力は著明に劣っていた。単離した骨格筋の収縮力測定では、野生型マウスと同様の収縮力を示した。筋病理解析では、筋線維内にリソソームの集積などヒトLAMP-2欠損症で見られる病理像を再現していた。また、縁取り空胞は局在した筋線維に形成されていた。次に、LAMP-1過剰発現Tgマウスを作製した。このマウスは、はぼ正常と同様に産出し、外観上異常は認められなかった。掛け合わせで得られたLAMP-2KO・LAMP-1過剰発現マウスは、持続運動力に改善が見られた。この結果は、LAMP-1の過剰発現により、LAMP-2欠損症が治療可能であることを強く示唆した。 DMRVについては、DMRVモデルマウス(GNEノックアウトで変異GNEを発現するマウス)を用いて、筋線維内にリソソームの集積などの病理解析を行った。アミロイド沈着が縁取り空胞形成に先行することが明らかになった他、リソソームの集積は主にタイプ2B線維に観察された。また、筋線維内分布は、LAMP-2KOマウスでの空胞形成と同様であり、両者の発症機序を考える上で、興味深い結果が得られた。
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