研究課題
放射線抵抗性の癌細胞SQ-5、DU145でHSP90阻害剤17-AAGとX線の併用療法により放射線増感効果を確認した。他方ヒト正常細胞では増感が観察されなかった。増感効果をもたらす細胞死の一原因としてDNA二重鎖切断修復(DSB)の阻害が両癌細胞とも、特に初期の修復において観察されたが、正常細胞では修復阻害が観られなかった。さらにDSB修復経路の1つであるHomologous recombination repair (HRR)経路への17-AAGの影響を調べ、その主要蛋白であるRad51,BRCA2が17AAG濃度依存的に抑制されていること、細胞照射後、Rad51のフォーカス出現が著しく遅れることを発見した。もう一つのDSB修復系である、非相同末端結合への17AAGの影響は観察されていない。また免疫沈降法による観察から、BRCA2が17AAGのターゲットになり、その後Rad51に影響を与えるという知見も得た。以上の研究は論文として発表され(Noguchi et al.2006)、放射線と17-AAGの併用は放射線抵抗性癌に対してDSB修復阻害に起因した放射線増感効果を誘導することと、その分子メカニズムの一端が解明された。他方RNA干渉法を用いて癌細胞を放射線増感する研究も進み、BRCA2蛋白のsiRNAを合成してHeLa細胞に応用し、十分なRNA,蛋白抑制作用が示された。その後BRCA2 siRNAとX線の併用作用により、HeLa細胞で放射線増感が起こる事を示した。また併用時におけるDSB修復阻害はゲル泳道法でも確認された。またDSB修復経路のうち、ここでもHRR系が影響を受けていることが、X線照射後のRad51のフォーカス観察等によって示された。この際非相同末端結合への影響は殆どないことも確認できた。以上の細胞での研究はin vivoにも適用され、マウス下肢に移植したHeLa細胞はBRCA2 siRNAと、X線の併用作用で、他の単独両方よりも顕著な癌成長抑制が観察された。(Cancer Res.論文投稿中)
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