研究課題
ヒートショック蛋白90(Hsp90)阻害剤・17AAGに関する研究では、昨年度の癌細胞特異的放射線増感研究(Noguchi et al BBRC 2006)に加え、放射線抵抗性の肺がん細胞SQ5移植腫瘍マウスを用いたin vivoでの実験が加わり、動物レベルでも、明らかな放射線(x線)増感があることが示され、放射線+17AAG併用療法の基礎が築かれた。さらに17AAGは重粒子線(炭素線)との併用でも増感があることが示され、其の分子機構はおそらくDNAの誤修復であることが示唆され、現在論文執筆中である。RNA干渉法を用いての放射線(x線)増感実験では、BRCA2蛋白のsiRNAを利用した実験が細胞レベル、動物レベルで終了し、HeLa癌細胞を利用しての結果が最近論文として発表された(Yu et al Cancer Science 2008)。その内容は、細胞レベルでは明らかなsiRNAによる放射線増感とともに、其の原因がDNA二重鎖切断修復、とりわけ相同組換修復の阻害によるものであること、移植腫瘍レベルでも、放射線(x線)単独処理に比べ、siRNAを一度前投与したがん細胞の成長は放射線(x線)と併用でかなり抑制されることが示された。さらに重粒子線(炭素線)とBRCA2 siRNAの併用療法でも、かなりの増感作用があることが細胞レベルで示され、重粒子線と相同組み換え修復阻害剤との併用は有効であるという、新しい知見を得た。この補助金の恩恵で上記のほかにも、多くの有用な研究を遂行することができ、これまでに15報を超える査読の有りの原著論文を発表することができ、非常に役に立った。
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