研究課題/領域番号 |
16209049
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
生水 真紀夫 千葉大学, 大学院・医学研究院, 教授 (30226302)
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研究分担者 |
井上 正樹 金沢大学, 医学系研究科, 教授 (10127186)
村上 弘一 金沢大学, 医学部附属病院, 助教授 (20242555)
小野 俊介 金沢大学, 自然科学系研究科, 助教授 (40345591)
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キーワード | アロマターゼ / 活性阻害剤 / 排卵障害 / 子宮筋腫 / 子宮内膜症 / 脂肪 |
研究概要 |
本年度は、アロマターゼ阻害剤の安全性確認のための研究成果をまとめるとともにアロマターゼ発現調節機構への影響を明らかにするための検討を行った。われわれはこれまでにトリコスタチンAなどのヒストンアセチラーゼ阻害剤にもアロマターゼ阻害剤としての作用があることを明らかにしているが、これらの薬剤の作用機序についての検討を行い、アロマターゼ阻害剤が内在する可能性のある副作用とその機序について検討した。SKBR-3細胞および脂肪細胞より分離した初代培養細胞のアロマターゼ活性は、ヒストンアセチラーゼ阻害剤にはアロマターゼ活性を強く抑制する薬剤(トリコスタチンAなど)と、軽度に活性を上昇させる薬剤(MS279など)が存在することが明らかとなった。この活性変化は主として転写抑制によるものと考えられたが、通常のプロモーターペクターを用いた一過性および安定遺伝子導入実験では転写抑制効果は再現されなかった。これらの遺伝子導入実験では逆に転写亢進が認められたことから、ヒストンアセチラーゼ阻害剤のアロマターゼ転写に及ぼす効果には、亢進作用と抑制作用の両方が存在しておりin vivoでは両者の相殺後の効果を見ているものと考えられた。次に、MPAK阻害剤の効果について検討した。検討したMEK阻害剤はいずれも転写抑制を介してアロマターゼ活性を低下させた。これらの成績は、将来のヒストンアセチラーゼ阻害剤やMAPK阻害剤の臨床応用に当たってアロマターゼ活性阻害作用にも配慮した検討が必要なことが明らかとなった。本年度は、昨年に引き続き、子宮筋腫患者およびPCOをともなう不妊症患者にアロマターゼ阻害剤を投与してその効果を検討した。さらに、本年度は凍結融解胚の移植にあたり、従来のエストロゲン・プロゲステロン補充周期とレトロゾール投与による排卵誘発周期での妊娠率を比較した。PCO患者で初回体外受精周期に限定して検討したところ、両群での妊娠率には差が見られなかった。通院回数や内服回数・費用などの面ではレトロゾールのほうが患者満足度が高く、従来のエストロゲン・プロゲステロン補充周期にかわる治療法となる可能性が示され、今後の継続して検討することとした。
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