研究課題
基盤研究(A)
本年は計画の初期段階として、新規骨吸収阻害薬についての基礎的な検討を行った。TNFα受容体とTNFαの結合部位に類似した配列を持ち、その結合を阻害する小ペプチド(WP9QY)を作成し、その効果を検討した。炎症性骨吸収を引き起こす代表的疾患でありリウマチ病態モデルとして、コラーゲン投与ラットによる関節炎発症動物を作成した。WP9QYは関節炎発症直前に皮下注射を開始し、2日おきに3回投与した。WP9QY投与によりひざ関節における炎症性骨膜組織の侵入および骨破壊が抑制されることが認められた。また足首関節における骨破壊も同時に抑制した。この作用は炎症スコアーの減少と破骨細胞数の減少を伴っていた。したがってTNF-TNF受容体を阻害するWP9QYのような小分子量ペプチドが、炎症性骨吸収を抑制するとともに、炎症そのものの病態の進行を改善することが認められた。またTNF受容体下流に存在するNF-kβの活性化(核内移行)に重要なNEMDタンパクを阻害するNBDペプチドを共同研究により開発した。NBDペプチドは、破骨細胞の分化や機能に重要なRANK-RANKLの相互作用もNF-kβの抑制を通じて阻害する。ラットにおけるリウマチ病態モデルにてその効果を調べたところ、本ペプチドにより炎症スコアーの減少、骨吸収阻害効果が認められた。また卵巣摘出ラットを用いた骨粗鬆症病態モデルにおいても、骨吸収抑制能を示した。したがってNBDペプチドはNF-kβの活性化抑制作用により、炎症および骨吸収が起こる原因であるTNF、RANKLの阻害を起こすことが明らかとなった。これらの実験結果をもとに、今後さらに新規骨吸収阻害薬の開発を進める予定である。
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Journal of Dental and Medical Sciences 52・1
ページ: 91-99
Nature Medicine 10・6
ページ: 617-624