研究概要 |
口腔領域の前癌病変、癌組織、正常組織について網羅的な遺伝子発現とタンパク発現のプロファイリングによるマッピングを行い、さらに、癌関連遺伝子を検索することを目的とした。 まず、正常口腔扁平上皮角化細胞(HNOKs)と口腔癌由来細胞株間でのタンパク発現プロファイルの比較を行った。細胞株それぞれのtotal proteinを抽出し、蛍光色素であるCy2、Cy3、Cy5をそれぞれラベルし、2 dimensional difference in-gel electrophoresis(2D-DIGE)を行った。ゲル上に展開されたスポットを解析し、有意な発現差の認められたタンパクスポットをゲルから切り出し、質量分析装置(MALDI-TOF/MS)とpeptide mass fingerprinting(PMF)を用いてタンパクを同定した。これらの同定されたタンパクの確認のために、Affymetrix社製GeneChipで遺伝子発現パターンを調べ、さらに、プライマーを作製してreal time PCRで発現量を解析して、RNAレベルの発現量を確認した。さらに、タンパクレベルの発現状態の比較を行うために、抗体のあるタンパクはWestern Blottingと免疫組織染色を行った。これらの確認作業の結果、正常口腔扁平上皮と比較して3種類の口腔癌細胞株に共通してタンパク発現がup-regulateしたタンパクは9種、down-regulateしたタンパクは13種であった。これらのタンパクには癌関連タンパクであるannexin A1,heat shock protein 27,lamin A/C, interleukin 1 receptor antagonist, serine proteinase inhibitor clade B5,stathmin 1,superoxide dismutase 2などを含んでいた。これらの特徴的なタンパクの発現を臨床材料に関してWestern Blottingと免疫組織染色により確認した。抗体の入手できないものに関しては、real time PCRによりmRNAレベルでの確認を行った。 これらの結果と臨床指標と比較を行い、各タンパクの機能を推測するとともに、臨床的応用の可能性を検討したところ、特に、MaspinとSutathminが分子腫瘍マーカー候補として優れていることが判明した。
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