研究課題
1.畠遺構や水田遺構が発見されている韓国無文土器時代の発掘調査状況を把握するため、科研研究グループと山東大学の研究協力者によって合同で韓国において2006年8月に踏査を行った。高麗大学古環境考古研究所ではセミナーを行うなど、韓国の研究者を含めた三カ国の研究者によって、東北アジアにおける農耕の伝播に関する最新の研究情報を交換することができた。また、韓国における畠遺構や水田遺構の発掘調査を観察することにより、将来の山東での生産遺跡での発掘調査法を確認することができた。2.10月には、山東省日照市両城鎮遺跡においてボーリング調査を行った。本遺跡ではこれまで浮遊選別法によって龍山文化期のイネ、アワ、コムギなどが発見されていたが、それらの生産遺跡がどこに存在しているかは不明であった。特に稲栽培がなされたであろう水田址を発見する必要があった。そこで地形的あるいは集落との位置関係から水田などの生産遺跡が存在する可能性のある3地点においてボーリング調査を実施した。その結果、集落遺跡の北西部に位置する低地部が可能性の高い地点であることが明らかとなったため、この地点で集中的にボーリング調査を実施した。ボーリングで採集した土壌から多量でかつ高密度のイネのプラント・オパールが広範囲にわたって検出され、集落遺跡北西部低地部が当時の水田址など生産遺跡である可能性が高まった。3.同じく10月には、形質人類学研究班によって、山東省の春秋時代墓地の歯冠計測を行い、親族構造を復元した。また昨年実施した大辛荘商代墓地における歯冠計測では、殉葬者間において血縁関係があることがわかり、発掘担当者とその歴史的解釈について意見交換した。4.石器の悉皆調査に関しては、2007年3月にこれまで未実測であった資料を煙台市博物館で実測し、膠東半島における悉皆的実測調査を終了することができた。また、山東大学では同じく山東の龍山文化・岳石文化期の歩家城遺跡や後李文化の月城遺跡の石器実測調査ならびに石器使用痕分析を行い、農耕具の使用実態の解明に大きな資料を得た。さらにそれらのデンプン分析やあるいは土器圧痕のレプリカ法による穀物資料の調査を行い、多大な成果があった。5.調査成果の公開に関しては、まずこれまでの調査成果を5月に行われた日本考古学協会大会において発表した。また、カナダにおいてUBCのJing Zhichun助教授、トロント大学のGary Crawford教授による本研究のレヴィウを受け、今後の調査方針や調査法に関して大きな指針を得た。さらにロイヤルオンタリオ美術館では中国初期青銅器の実測調査を行い、多大な成果を得た。
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東アジアと日本-交流と変容- 第4号
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史淵 144輯
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