研究課題
基盤研究(A)
本研究成果報告書は、東南アジア・東アフリカの地域社会における紛争処理と多元的法秩序の生成に関する法人類学的共同研究の成果の一部である。研究代表者(宮本勝)、研究分担者(清水芳見、堤和通、森正美)、研究協力者(石田慎一郎)の計5名は、4年にわたり、マレーシア、ブルネイ、フィリピン、ケニアで、文献資料・裁判記録の収集に重点をおいた紛争処理と多元的法秩序生成に関する実態調査を実施してきた。以下のとおり、当初の研究目的に即したインテンシブな調査研究を実施し、貴重な研究資料を得た。宮本勝は、マレーシア・サバのカダザン社会の固有法の実態調査ならびに原住民裁判所の審理記録の分析に基づいて、原住民裁判所における慣習法運用の諸特徴と慣習法標準化の展開を明らかにした。清水芳見は、ブルネイにおける非公式の寄合ならびにイスラーム法裁判所の実態調査に基づき、ブルネイ法文化における訴訟回避行動の社会的背景を明らかにした。堤和通は、マレーシア・サバの原住民裁判所と通常裁判所における法運用の実態調査に基づき、手続法と実体法との両面において原住民裁判所の比較的特徴を明らかにした。森正美は、フィリピン・パラワン島での実態調査にもとづき、地域社会の紛争処理の特徴を、文化的、社会的、宗教的諸側面から明らかにした。石田慎一郎は、ケニア中央高地イゲンベ社会における実態調査にもとづき、地域社会の非公式紛争処理から通常裁判所の公式紛争処理に至る多元的法体制の全体像を明らかにした。また、本報告書には、宮本と共同で調査を実施したジュデス・ジョン・バプティストがロトゥッド固有法における法前提の一側面を究明した調査報告論文を所収している。国内外で研究成果を開示するため、本報告書は、全編英文で作成した。今後、本報告書の内容を全面的に改訂し、単行書として出版する予定である。
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